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第338話。暗黒神竜エレサーレに巻き付いていた鎖を、ルイとマ・リエが邪竜から取り上げる。それに怒る邪竜と少女マ・リエとの間に立ち塞がったエレサーレだったが…。

第338話です。

「そうらどうした、貴様の体はもうもたないか? ボロボロに崩れ去って、跡形もなく消えてしまうぞぉ?」

 勝ち誇り、哀れな闇竜を眺める皇帝は、だから他のことは一切見ていなかった。

 その、とき。

 エレサーレに巻きついた金色の鎖が、突然強い力で引っ張られたのだ。

「な、なんだと?」

 邪竜から離れた鎖の端には、その鎖をとりつけられた杖がついている。皇帝が持っていたものだ。

 その杖に近い部分の鎖を、金色の翼を羽ばたかせた純白のユニコーンが、その口にくわえて引っ張っていた。

 それは神金竜の眷属となった、ユニコーンのルイだった。

 その背に聖銀竜の少女を乗せたまま、エレサーレから鎖を引きはがそうと、鎖をくわえて力一杯空を駆ける。

「ぬうう、させるか…!」

 邪竜の中心には炎竜の子がいて、皇帝はその中にいた。

 皇帝は鎖をとりつけてある杖に細い触手を巻きつけて、己が元へと引き寄せようとした。

 すると、その触手は見る間に浄化され消えてしまったではないか。

「な、なんだと…?」

 皇帝がようやく周囲を見れば、聖銀竜を内包する少女マ・リエが、その白い手を邪気に真っ黒に染めながら、その胸に抱きしめるように金色の鎖をとりつけた杖を握り締めていた。

「何をする…! この、小娘がッ…! 杖を、杖を返せえ!」

 邪竜は吠えた。

 またしても、あの小娘が邪魔をするのか。

 邪竜の中の皇帝は怒り狂った。

 少女は白い翼を羽ばたかせて、高速のスピードで邪竜から離れていく。

 大きな翼を背にした、小さな白い少女を追いかける邪竜の前に立ちふさがったのは、ルイによって解放された暗黒神竜エレサーレだった。

「行カ…せ、ヌ…」

 現れた時よりも小さくなり、その輪郭さえ歪んだエレサーレは、それでも巨大な邪竜を前に、一歩も譲らなかった。

 左右三枚ずつの羽根のうち、右側の羽根は二枚が根元から消え去り、左側の羽根は一番上が折れている。胸にはいくつも穴が開き、頭に至っては右半分がなくなり、左側しか残っていない。

 その残った左目で、エレサーレは邪竜をにらみつけた。

 ボロボロのその背に、白い少女をかくまいながら。

 そんな姿の竜に邪魔をされた邪竜は、カッとなって叫んだ。

「どけぇ、このガラクタがぁ!」

 そしてその手でエレサーレを殴りつけた。

 エレサーレはなんとかその拳をかわしたが、続けざまに襲ってきた尾の打撃をもろに受けてしまった。

 そして…エレサーレは粉々になって、砕け散った。

「きゃあっ! エレサーレ…ッ!」

 逃げながらもその衝撃音に振り向いたマ・リエは、ひどく驚いて叫んだ。

『大丈夫だ、マ・リエ。エレサーレの気配は消えてはいない』

 マ・リエのなかの聖銀竜、ナギがそう語りかけるが、マ・リエの驚愕はおさめられなかった。

「で…でも、でも…あんなに、こなごな、に…」

 追ってくる邪竜から必死に逃げながら、マ・リエは焦った。

「わたしを、守って…」

 泣き声になるマ・リエに、ナギが懸命に語り掛ける。

『落ち着け、マ・リエ。よく聞くのだ』

「わああ、エ、エレサーレ…っ」(続く)

第338話までお読みいただき、ありがとうございます。

エレサーレは砕け散っていなくなってしまうのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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