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第337話。邪気を消し去る神金竜の力をもつ、金色の鎖に締め上げられて、悲鳴を上げる闇竜エレサーレ。勝利を確信し、皇帝を内包した邪竜が高らかに笑う。対抗するすべはあるのか?

第337話です。

「ハハハハハハ…! どうした、どうした小賢しいものめ! このまま砕かれて、消えてしまうがいい!」

「エレサーレ…!」

 マ・リエが叫ぶ。見下ろす目線の先で、エレサーレはひどいダメージを負って、辛そうに鳴いた。

「まずい、あれは…!」

 ルイが金色の鎖を見て声を上げた。

「あの鎖についている石には、ヴァレリア様の御力が入っているんだ」

「え…ええっ?」

「邪気を持つ者にとって、致命的なものだ! あいつ、邪気そのもののような存在なのに、どうしてあんなものを持っているんだ…! それに、どうやって使えているんだ!」

「そんな…ヴァレリア様から奪った御力を、こんなふうに使うなんて…!」

 マ・リエが悲鳴のような声を上げるのを聞きながら、ルイは空中で歯噛みしていた。

 自分はヴァレリアの力を得ているというのに、だからこそあの鎖の正体にも気づけたというのに、ここで何をすることもできずにいるだけなのかと。

 そんな二人の眼下では、邪竜と化した皇帝が高笑いを続けていた。

「ハハハハ、クワッ、クワッ、グハハハハ…!」

 皇帝は狂ったように汚い笑い声を響かせながら、己のまとう邪気のもやから出た金色の鎖を、ジャラッ、ジャラッと動かした。

 地面にうずくまるエレサーレを打ち据えるのも飽きたのか、それとももう勝ったと余裕が出たのか、空中で鎖を振り回してみせる。

「余の邪魔をするものは許さぬ。あとかたもなく、砕いてくれるわ…!」

 笑いをこらえきれぬといった声で皇帝がそう叫ぶと、金色の鎖は彼から離れ、意思を持った蛇のように、地面に倒れ伏すエレサーレに巻き付いた。

「ウ、ウウゥ…!」

 エレサーレが苦し気な声を上げる。

 その声は人々にも届き、地上で戦いを見守っていた人々は、今まで優性だった闇竜の突然の劣勢に、驚き悲しみおのおの叫んだ。

「闇竜様…!」

「どうなさったのですか、立って、立ち上がってください…!」

「我々のために、どうか立ってください…!」

 しかし人々の祈りもむなしく、エレサーレは鎖にきつく締め上げられて呻いた。

 金色の鎖にじわじわと締められたエレサーレの体は、その身を構成している邪気が神金竜の神気によって消し去られ、ボロボロと崩れ落ちていく。

「…ガッ…ア…! グアァァ…ギィィィ…」

 たまらず悲鳴を上げるエレサーレに、人々は胸を詰まらせた。

「グワッグワッグワッ…苦しいか? どうだ苦しかろう…ハハハ…もっと、もっと苦しめぇ…!」

 皇帝は残忍な喜びに酔い知れ、さらに鎖を操ってエレサーレを苦しめた。

 竜の体を持ち、邪気をまとって邪竜となった皇帝を倒せる者など、邪気を消し去る力をもった神金竜しかいない。その神金竜はもはやヴァレリアしかこの世に存在せず、彼女はろくに動けないほどに弱らせてある。

 そう、皇帝は思っていた。

 だから、彼に危害を加えられるものなど、もはや有り得ない。

 突然目の前に現れて邪魔をしようとした、この奇妙な同類を消し去りさえすれば、もう、彼に怖いものなどない。

 そしてその同類は、今にも死んでしまいそうだ。(続く)


第337話までお読みいただき、ありがとうございます。

このままではエレサーレは…。

また次のお話もお読みいただけたら嬉しいです。

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