第326話。美しい黄金の翼もつユニコーン、ルイが現れて、彼への愛を改めて感じる少女マ・リエ。彼女が背中にまたがると、ルイは邪竜をも包み込む大きさの結界を展開する。そして…。
第326話です。
両方の瞳からぽろぽろと涙を零す私の頬を、その鼻づらで優しく撫でて、ルイは私に向かってその白い背を差し出した。
「オレは大丈夫だ、マ・リエ」
「…ルイ」
「さあ、オレの背中に乗れ。これでマ・リエと一緒に戦える」
一瞬戸惑う私に、ルイは優しく繰り返した。
「さあ、乗って」
「うん。ありがとう、ルイ」
その一言に全ての気持ちを込めて、私はルイを潤んだ瞳で見つめた。
ああ…大好きよ、ルイ。
あなたはいつもこうやって、私がつらい時に傍にいて守ってくれるのね。
愛しているわ。ルイ。
ごく自然に胸に満ちたその想いに、私は深く呼吸をして、ユニコーンの姿をした男性を前に両手を胸の前で組んだ。
そうしないと、この胸の高鳴りが胸を突き破ってしまいそうだった。
ルイはてへ、といった顔をして、少し恥ずかしそうに顔を逸らしたが、その先に邪竜の姿を見たのだろう。
キリリと表情を引き締めて、深い森のような翠の瞳で私を振り返った。
「さあ、マ・リエ」
「うん」
そうは言っても、ルイの背中は今まで以上に純白で、艶々と輝いていた。今まで乗せてもらったことだってあるのに、今の彼はおそるおそる、といったふうにしか触れそうにない。
それほど美しく、神々しかった。
こんなひとが…私を想ってとても辛かっただろう洗礼を自ら受けてくれただなんて。
呼吸が苦しいわ、ルイ。
でも…早くしなくちゃ。あの竜を放ってはおけないもの。
ようやく私が背中にまたがると、ルイは少し頭を下げて、黄金に輝く一本角を邪竜の方に向けた。
すると、その角がまばゆく光り始めたではないか。
金色の光は、私とルイを中心にしてまるく広がり、両親の結界を通り抜けて邪竜の後ろまですっぽりとくるんだ。
それはまるで、私たちを中心とした淡い金色のシャボン玉のようだったが、とても強い結界なのが感じ取れた。
すごいわルイ、あなたはこんなこともできるようになったのね。
私の心の感動に答えるように、ルイが低い声でつぶやくように言う。
「これでアイツは、ほころびから邪気や虚無をとり込めなくなった。オレの結界を破ることもできないよ」
「そうなの?」
私が驚いてそう問うと、ルイは黄金のたてがみを揺らして振り返り、ちょっと得意気にその森のような翠色の瞳を細めた。
「うん。ヴァレリア様ほどの強さはないけど、それでも神金の結界だからな」
なるほど、そうなのね。
ヴァレリア様の御力を得たから、あなたは神金の力をも振るえるようになったのね。
黄金の翼もつその姿だけでなく…本当に、素晴らしいわ。
あなたが傍にいてくれることが、どんなに心強いことか。
感心する私を見つめて、ルイは微笑んだ。(続く)
第326話までお読みいただき、ありがとうございます。
ルイの結界の中で、マ・リエは戦うことになるのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




