第320話。己の内の聖銀龍ナギを守ろうとするマ・リエが思いついたこと、それは、己の体をこの世で最も硬い物質に変換することだった…。ナギは必死に止めようとするが、マ・リエは…。
第320話です。
岩? いいえ、植物の根でも、岩には食い込んでくるわ。
金属? だめよ、鉄や銅はさびてしまう。
それじゃあ、宝石は? 水晶やルビー、サファイアでも割れてしまう。
でも…。
私はひとつのことに思い立った。私の世界に在った、最も硬い物質のことを思い出したのだ。
そうよ、あれならできる!
私は意識を集中した。必ずできる、と確信があった。
そうして指先や足先から、体が変化し始める。
きらきらと輝く、透明な…そう、ダイヤモンドに。
最終的には邪気に侵食されてしまうかもしれないけれど、他のどんな物質よりも、これで私に入り込むには手間取るでしょう。
ヴァレリア様が言っていた助け手…闇竜エレサーレが来るまで、時間を稼ぐことができるわ。
全身の表面がダイヤモンド化し始め、触手を弾き返す。
『何をしてる、やめろマ・リエ! 石化が内部まで…心臓まできたら、そなたは死んでしまう…! 頼む、やめて、やめて、くれ…!』
私の中で、ナギが必死に叫んでいる。
ナギ、困らせてしまってごめんなさい。
そうよね。優しいあなたは私のことをいつも心配してくれていたものね。
今のこんな状況を、許せるわけはないものね。
でも。
私はやめる気はないの。
だって。
「大丈夫よ、ナギ。私は死なないから。体の体が死んだら、私の魂をナギ、あなたの魂の中に入れて。全部が無理なら少しでいいの。それであなたは生きられるわ」
私はわざと明るくそう言って笑った。
ナギが息をのむのがわかった。
無茶を言っているのはわかっているの。
でも、今はこの状況をなんとかしなくては、どうにもならない。
ナギの力は少しは落ちてしまうかもしれないけど、この方法が一番いいの。
体はどんどん石化していく。動くことはできないけれど、代わりに絡まれている触手にえぐられることももうない。
そんな私に、ナギの涙声が聞こえてきた。
『いや…だ。我は…そんな、ことは…いや、だ』
ああ、泣かないでナギ。
あなたが泣くと、私の心臓も一緒に泣いてしまうわ。
胸が痛くなってしまうわ。
でも、わかって。もうこれしかないんだって。
だからやめることはできないの。ナギという私の心臓が助かれば、生きていける。手足である私の体が壊れてしまっても、あなたは生きていけるわ。
そのためなら…私はどんな犠牲をはらおうともかまわないの。(続く)
第320話までお読みいただき、ありがとうございます。
マ・リエは一体どうなってしまうのでしょうか。
また次のお話もお読みいただけたら嬉しいです。




