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第317話。聖銀竜ナギを内包する少女マ・リエの前に立ち、邪竜からの攻撃から彼女を守るのは、八千年前存在していたナギの姉ナユの幻影だった。だがマ・リエの胸元のナユのウロコが…。

第317話です。

「小娘ぇ…まだそんな力が残っていたのかあ…! 生意気な小娘めぇ…!」

 攻撃を防がれた邪竜…皇帝が、苛立ったようにそう叫んだ。

 そうよ、私たちにはまだ力が残っている。

 あなたと違って、私たちには守りたいものがあるの。

 そのためなら、この身に残る力を振り絞ることができるのよ。

 あなたの力の源はなに?

 自分の欲望だけでは、私たちには勝てないわ。

 そうよ、きっと勝ってみせる。

 でも、皇帝にはナユの姿が見えていないらしかった。

 彼女は私の前で薄く光りながら、私への攻撃を防いでいるというのに。

 もしかして、私にしか見えていないの?

 そのとき、邪竜は首を打ち振って叫んだ。

「おのれ、おのれぇ…これでどうだ! これでも防ぐというかあ…!」

 真っ赤な口を大きく開いた真っ黒な邪竜の姿が大きくふくらむと、邪気のもやが全身から立ち昇ってさらに大きく見えた。

 そして…次の瞬間、爆発するように弾けたのだ。

 すると、今までの何倍もの触手と邪気のつぶてが私たちに襲い掛かってきた。

 けれど、おびただしい数の触手もつぶても、私の少し前に立っているナユの放つ光の中に消えていく。

 でも…その引き換えのように、胸元の袋の中で光っていたウロコの一枚が、パリ…ン、と小さな音をたてた。

 その小さな音に私は、ウロコが…数枚しかない、大切なナユのウロコが砕け散ってしまったことを知った。

「そんな…ナユ…!」

 私が悲鳴を上げると、私の前に立ちふさがった光のナユから、また小さな声が響いてきた。

『守る…まもる、わ…わたしの、いもうと…』

 えっ?

『マ・リエ…わたしの、いもうと…』

 なんてこと。

 ナユは弟のナギを内包した私のことも、妹だと言ってくれるの。

 目の奥がじんわりと熱くなってきて、私は多数の触手や邪気のつぶてから私を守ってくれるナユに、呼びかけることしかできなかった。

「ナユ…ナユ、もういいわ、私、頑張るから…! あなたのウロコが、なくなっちゃう…!」

『マ・リエ…まもる、わ…』

 パリ…ン。

 二枚めのウロコが砕けた。

 やめて、もうやめて。お願い。

『ナギ…わたしの、おとうと…マ・リエ…わたしの、いもうと…たいせつな、家族…まもる…守る、ねえさん、が…』

 ナユは振り返り、半分透けたたおやかな腕が私の首に回されてきて、そっと抱き締められた。

 実体はなかったけれど、抱き締められた感触が確かにあった、そのとき。(続く)

第317話までお読みいただき、ありがとうございます。

マ・リエを抱き締めたナユはこのあと…。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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