第315話。ほんの少しの気のゆるみに、邪竜からの攻撃をくらってしまうマ・リエ。邪気祓いのドレスのおかげで、ダメージは軽減されているが、そのあと邪竜から伸びた触手が…。
第315話です。
「ラララ、ララ…」
声を張り上げて歌ったけれど、今までで一番強い邪気のつぶてが、太い触手が、私にビシバシと当たる。急所に当たらないようにするのがやっとで、私は懸命に歌い動き続けた。
そんな私の左肩に、邪気のつぶてが当たって、ドレスごと肉がえぐられた。
「うっ…!」
あまりの痛みに私は呻いた。歌が途切れたその瞬間に、次のつぶての端が右のこめかみに当たって、ヴェールが半分引きちぎられた。
それでも、黒鋼竜のおばば様が用意してくれたこのドレスとヴェールのおかげで、ダメージは軽減されている。
本当に、有り難いわ。
これがなかったら、今頃私はズタボロだっただろう。
きっともっと血まみれになっていたに違いない。
ドレスとヴェールを織ったであろう、過去の黒鋼竜の女性たちにどれだけ感謝しても足りないくらいだわ。
それに、このドレスを着付けてくれたおばば様の祈りを感じる。
大丈夫、おばば様。
わたし、頑張るね。
そうよ、こんなことで負けないんだから。
覚悟なさい、邪竜…いえ、皇帝。
私はあなたに負けてなんてやらない。
でも…神気が減ってきているのがわかる。ナギが一生懸命力を送ってきてくれているけれど、そのナギも消耗している。
正直言って、辛かった。
休みたい。
ほんの少しだけでもいいから、休みたい。
人間の世界では戦いなんてしたことなくて、こちらの世界に来てからもこんな激しい戦いを私ひとりで負うなんて初めてで。
こんなこと、したことないのに…ああ、痛い。
疲れと痛みにうっかり気を逸らしてしまったために、少しだけ動きが鈍ってしまったらしかった。
「ああ…ッ!」
脇腹に細めとはいえ、触手が深々と刺さったのだ。
いや、痛い、いたい、それに…体の中に、直接邪気が流れ込んでくる。
それは私の体内深く潜り込み、ナギを目指していた。
「いや、だめ、ナギ、ナギ…っ!」
私は悲鳴を上げた。
そして懸命に、その触手からの邪気を止めようと、力を注いだ。
けれど触手は消えない。細くはなったけど、消えなかった。
そして細くなった分、えぐられた肉から血があふれ出して、みるみる邪気祓いの白いドレスを赤く染めていった。(続く)
第315話までお読みいただき、ありがとうございます。
マ・リエはナギを守れるのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




