第298話。神金竜ヴァレリアは、マ・リエがすることは今までしてきた浄化と同じだと話す。しかし邪竜に勝つことはできないとも。そのわけとは…。
第298話です。
『すまぬ、言い方が悪かったのう。マ・リエ、そなたがすることは浄化と同じじゃ』
「浄化、と同じ?」
『そうじゃ。そなたは歌えばよい。この場であれの邪気を、祓い続けるだけじゃ。だが…』
そこで、彼女は言いよどんだ。
「?」
一体、なんだろう。
『…マ・リエ。そなたは、あれに勝つことはできぬ」
「えっ…」
『あれの力は邪気と虚無。そしてあれの傍には、ほころびの瞳が開いている』
「あっ…」
ヴァレリア様の言葉に、背筋が凍った。
そうだ、そうだわ。
つまり、あの邪竜は無限に力を補充できるということ。
この私とナギが、力尽きるまで…。
かつて黒鋼の里で見つけたナユのウロコに入っていた、ナユの言葉がよみがえる。
『ナギ、あなたはこの竜には絶対に触れてはいけない。あなたは
コレには勝てない。絶対に。触れられた瞬間に、吸収され殺されてしまうわ…』
怖い。
逃げてしまいたい。
でも私たちが逃げ出してしまえば、あの邪竜は追いかけてくることだろう。
邪気を、この世界にまき散らしながら。
邪気は街をのみこみ、森を、大地を汚染してゆくだろう。
そんなこと…絶対に、許してはならないわ。
だから。
逃げられない。
逃げては、いけない。
『ヴァレリア、それなら我らはどうすればよいのだ?』
葛藤する私に助け舟を出すように、ナギが言った。
『勝つこともできず、逃げることもできず、力尽きるまでただ、抑えるだけでは…』
ナギの声は、珍しく荒ぶっていた。
そう、私たちにはどうにもならない…。
『落ち着くのだ、ナギよ。そなたらを犠牲にするわけがなかろう。わらわに策がある。わらわを信じよ』
えっ、なにか作戦があるの?
それは一体、どんな?
勝つことはできないって言われて絶望感があったけれど、何か解決策があるのなら、その希望をぜひ聞きたい。
『わらわが万全ならば、あれを倒すこともできたであろうが、今はそれも出来ぬ…だが、わらわが戦ったなら、あれに乗っ取られた炎竜の子も殺してしまう。わらわの力は、邪気と虚無の消滅だからな。それに汚染された肉体も魂も、消してしまうのじゃ』
そう…そうよね。
そういう意味では、今のほうがマシだものね。(続く)
第298話までお読みいただき、ありがとうございます。
ヴァレリアの語る策とは一体。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




