表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/355

第295話。邪気に沈められていた炎竜の子の魂に、絡みついているもう一つのものとは。その正体を知り、ぞっとするマ・リエ。そんな彼女に邪竜がしてきたこととは…。

第295話です。

「魂は…違う…いいえ、炎竜の子の魂は感じるけれど、もう一つ…別の魂を感じるの。とても邪悪な…邪気などよりよっぽどタチの悪い、嫌悪感を感じるくらいの憎しみをもった魂よ」

 ナギは黙り込んだ。

 私は目を閉じて、目前にいる邪竜に意識を集中した。

 神気と魔力を使えば、邪気にまみれた邪竜の中を覗けるような気がしたからだ。

 それに、何かあればナギが教えてくれるだろう、という信頼もあった。

 私の意識の中で、黒い竜の形をしたもやの中心に、うっすらと輝くものが浮かび上がった。

 それは赤みを帯びていて、球体をしているように見える。

 見つけた。

 きっと、あれが炎竜の子の魂なのだ。

 良かった、あの子の魂はまだ存在しているのね。

 けれど、その美しい赤い輝きの縁には、黒いシミのような、どろりとした泥のアメーバのようなものがへばりつき、球体の中に何十本もの邪悪な触手を差し込んでいるではないか。

 触手が動くたびに、赤い球体は歪んで震え、苦し気にもがいていた。

 なんということだ。

 美しい魂に、別の邪悪な魂が寄生しているのだ。

 その様を見た私は、ぞっとして震えた。

「ひどい…魂に寄生されて、体を乗っ取られたのね。ヴィレドさんが言っていた、皇帝の中にいた何かに…」

 私には、直感的にわかった。

 あの黒いアメーバのような魂の正体が。

 それは、魂は消えぬまま邪気に汚染され、そして邪気を操る力を手に入れた人間のものだと。

 エレサーレの中にいた王様や王妃様のように、ほとんど邪気と同化しながら、その意識や心を保ち、しかし王様たちとは違って邪気を操る力を手にしたのだろう。

 どうやってか、はわからないけれど。

 そこまで私が考えたとき、その魂を内包した邪竜が吠えた。

「キュアアアアア…」

 この咆哮と同時に、邪竜のまとっていた黒いもやが一気に膨れ上がり、そしてはじけ飛んだ。

 黒いもやは多数の触手に形を変えると、私を囲むように迫ってくるではないか。

 私はあわてて周囲を見渡した。

 けれどその時にはもう既に、全ての方角が黒いもやの触手で覆われていた。

 まるで網をかぶせられるようで、私はゾッとして息をのんだ。

 しかもその網は、触れれば邪気に汚染されるものなのだ。

 怖い…けれど逃げることもできない。

 私の中のナギが、咄嗟に神気で結界を張ってくれたけれど、それは間に合わなかった。

 結界より早く黒い触手が滑り込んできて、私の腕に絡みついた。

「きゃあっ!」

 私は体をすくませて、それを振り払おうとした。

 その時。

「ギュアァ…グウ…ッ!」

 邪竜が悲鳴を上げたのだ。

 見ると、私の腕に絡みついた触手が、ボロボロと形を失ってもとのもやに戻り、私から離れていく。(続く)

第295話までお読みいただき、ありがとうございます。

なぜ、触手はくずれていったのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ