表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/356

第292話。皇帝ディガリアスの使い魔が消えた頃、マ・リエたちは驚愕のものを見ていた。それは…。そして黒鋼竜たちが結界を展開する中、マ・リエの中の聖銀竜ナギが叫ぶ。

第292話です。

 いずれにしても、貧しい母親とその子どもにかつて、とてつもなく悲しいことが降りかかったのは間違いない。

 ヴァレリアはそれを思って胸を痛めた。彼女の表情からそれを読み取ったルシアンもまた、唇を噛んで言葉を途切れさせる。

 ユニコーンたちも、使い魔が消えた辺りをじっと見つめていた。




「動ける者は、みんな結界の中に逃げ込んだみたいね」

 周囲を見回したマ・リエは、ほっとしたように溜め息をつきながらそっと呟いた。

 しかしそれに応えたのは、硬い声でナギが放った言葉だった。

『地上は一応清めたが、地下深くには何百年もの間に溜まった邪気がまだ大量に残っている。ほころびの瞳からも、邪気と虚無がまだまだ噴き出してくるはずだ。油断をするな、マ・リエ』

「…わかったわ、ナギ」

 マ・リエがそう答え終わるか終わらないかの時だった。

 ほころびの瞳から、ビリビリビリッ…と、何かが引きちぎられるような音が響いてきたのは。

 驚いて振り返ったマ・リエや人々は驚愕した。

 半眼に開いていたほころびの瞳が、糸で縫ったような聖銀竜の封印を引きちぎって、カッと全開に開いたのだ。

 それは誰も見たことがないほどに大きく、邪悪に。

 そこから石の弾丸のように、虚無と邪気とが四方八方に飛び散った。

 石つぶてというよりは、まるでレーザーか何かのようだった。

 それは先程まで降り注いでいた虚無のすすのような柔らかなものではなく、確固たる質量をもって周囲にぶつかった。下の街の建物の屋根や壁をぶち抜き、みるみるうちに破壊していく。建物もその周辺の狭い庭も道も、えぐられるように破壊されてその形を失い、瓦礫となって降り注いだ。

 大地に大穴を穿つほどの勢いの虚無と邪気は、ドカン、と凄まじい勢いをもって黒鋼竜の結界にぶち当たった。

 一度発動されたあとは自動的に展開されていた結界を、とっさに黒鋼竜たちが手を掲げて力を注ぎ、強化する。そのため何とか破られずに済んだが、結界の中はたくさんの人々の悲鳴で満ちた。

 結界の境界の近くにいた人々は、腰を抜かしたり泣き出したりする者もいた。

 大地にうがたれたたくさんの穴からは、再び邪気の煙が立ち上り始め、崩れた塔のあった穴からも、空まで届く邪気の噴煙がごうごうと噴きあがった。

 そして空は再び、どす黒く染まっていった。

 マ・リエたちは神気の結界をもってその身を守ったが、辺りは目を覆うようなひどい状態となっている。

 ナギが呻いた。

『なん…だ? 何かが地下から上がってくる。邪気の塊? いや…これは生命、だ…!』

「生命?」

 マ・リエは周囲を見回した。彼女の中で、ナギが悲鳴にも近い叫び声を上げる。

『まずい…! マ・リエ、ここから離れ…!』

 その声が終わる前に、塔の崩れた穴から一段と濃い邪気が噴きあがった。それはもはや煙などではなく、液体に近いものだった。

 火山が噴煙のあとに、マグマを噴き上げるのにも似ている。

「あ、あれは…あれは、なに…?」

 マ・リエは叫んだ。ナギの答えはない。

 そして。(続く)

第292話までお読みいただき、ありがとうございます。

噴きあがった邪気は一体何なのでしょううか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ