第286話。ようやくユニコーンのルイを見つけ出したダグとタニアに紹介されたのは、マ・リエによって救い出された神金竜のヴァレリアだった。その時城の辺りから噴きあがったのは…。
第286話です。
「おーい、ルイ!」
「あっ、ダグ、タニア!」
ルイの近くまで走ってきたダグは、タニアが降りたあと人型になった。
タニアはルイに詰め寄る。
「ルイ、姫様はどこ? どこにいらっしゃるの?」
その問いに、ルイが答えた。
「今さっき、風の長殿の背に乗って、城のほうに行った」
「あー…やっぱりさっきの竜は風殿だったか…」
ダグとタニアは肩を落とした。
「仕方ない。ここで待とう」
顔を上げたダグは、ルイの少し背後にいる、ルシアンに抱えられたヴァレリアに気づいた。
「あの方は、もしかして…」
「ダグ、タニア、こっちに来てくれ。紹介するよ」
ルイに連れられてヴァレリアのもとへ行くと、ルイは二人を彼女に示した。
「ヴァレリア様。私の仲間の、ユニコーンであるダグと、雷虎のタニアです。…ダグ、タニア。この御方が神金竜であらせられるヴァレリア様だ」
「この方が…」
「マ・リエは成功したのね」
ダグとタニアはその場に膝まづき、ヴァレリアに対して敬意を示した。
「私はダグと申します。聖銀のマ・リエ様にお仕えしております」
「私はタニア…タランディアナ・ニーアです。同じく聖銀の姫様の従者をしております」
すると、座っているルシアンにもたれていたヴァレリアは、辛そうではあったがゆっくりと身を起こして彼らを見て、優しく微笑んだ。
「そうか…わらわは今、このありさまでな。色々と手伝いを頼んでしまうと思うが…助けてもらえるだろうか?」
その問いに、ダグとタニアは背筋を伸ばした。
「はっ、神金竜様のお手伝いができるのならば、光栄です」
「そうか。よろしく頼むぞ」
彼女の姿も声も弱々しくはあったが、確かに神金竜の荘厳さを感じさせて、ダグとタニアは希望を持つことができた。
その時、帝都の城の中心にある塔のあった辺りから、噴煙が噴きあがった。それは黒く、虚無のものであることがはっきりとわかった。
地の底から天空へ向かい、高々と噴きあがる虚無の煙。
ユニコーンたちは呆然と、それを見ていた。
ヴァレリアが低い声で呟く。
「地の底に溜まった邪気が、開いたほころびの瞳から落ちた虚無にあおられて噴きあがってきたか…」
「あそこに、マ・リエが…」
息をのむルイに、ヴァレリアが続けて言う。
「まずいのう。あの高さまで虚無が噴きあがってしまえば、細かいすすやホコリとなって風に乗り、帝都中…いや、それよりも外まで広がってしまう」
ルシアンも頷く。
「そうですね…」
そんなルシアンに向かい、ヴァレリアは言った。(続く)
第286話までお読みいただき、ありがとうございます。
ヴァレリアは何を言おうとしているのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




