第285話。マ・リエを探す、黒いユニコーンのダグとその背に乗る雷虎のタニア。ようやくマ・リエの居場所を知っていそうな兵士を見つけたが、彼が教えてくれた場所は…。
第285話です。
「あっ! ダグ、彼らなら、きっと姫様のことを知っているわ!」
「そうだな、よし!」
ダグが走り出すと、あっという間に兵士たちの近くまでやってきた。彼らにタニアが声をかけようとすると、彼らは叫んだ。
「何をしている! 早く都の外側に逃げろ! お前たちには、あのほころびの瞳が見えないのか!」
もちろん、見えている。
丘の中腹までやってきた今、さっきよりずっとよく見えているのだから。
その恐怖も、ひしひしとこの身をむしばんでいる。
本能が、あれから逃げろと叫んでいる。
しかしマ・リエのため、ダグとタニアは逃げようとはしなかった。
兵士たちにマ・リエの行方を聞こうとしたが、まったく相手にされなかった。それどころか、こちらを突き飛ばして自らが走るのに必死だ。
「どけ! 我等は他の民を助けに行くのが精一杯だ! お前たちはさっさと逃げるんだ!」
兵士たちが突き飛ばしてこようとするのを、ダグは右に左にと避けた。その背に乗ったタニアは、薄い金髪をなびかせながらダグにしがみついている。
「ダグ! 大丈夫?」
「オレは平気だ。こう見えても戦士なんだぞ? それより、どうにかしてマ・リエの居場所を聞き出さないと」
「そうね」
タニアはダグの背から手を伸ばして、丘から駆け下りてくる兵士たちを捕まえては、マ・リエのことを聞き出そうとしたが、誰一人として彼らの質問に答える者はいなかった。
兵士たちは指揮官に率いられて、どうにかこうにか統制を保ちながら、丘を下りてあちこちに別れていった。
丘を登りながら兵士を捕まえては、話にならずに逃がしていた二人は、やがてようやく馬に乗った一人の兵士から、マ・リエのことを聞き出すことができた。
「姫様はどこ? 白いドレスに、青銀色の髪をした少女よ、知らない?」
するとその兵士はまじまじと、タニアの金色の瞳を見つめた。
「…あんたは、あの方の従者なのか?」
「そうよ。ねえ、知ってるの? 教えて!」
「あの方なら、丘をもう少し登って、右側のほうに行かれた…」
「右側?」
「…あー、さっき緑色の竜が飛んで来た辺りにおいでのはずだ」
「な、なるほどね、わかったわ。ありがとう」
「急いで行ってくれ。あそこにはもう、神金竜様と従者三人しかいないんだ。俺たちもお守りしたかったが、それより民を守れと命令されてな」
「マ・リエらしいな」
「守りは一人でも多い方がいい。まあ…もしかしたら二人になっているかもしれないが…一体、どいつが竜だったんだ…」
ブツブツと呟く兵士に再び礼を言って、ダグとタニアは丘の中腹を駆け上がり、翡翠色の竜が飛び立っていった辺りを探した。
やがて彼らは、目立つ真っ白な髪の男を見つけた。
「ルイだ!」(続く)
第285話までお読みいただき、ありがとうございます。
ようやくルイを見つけましたね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




