第272話。崩れかけた洞窟からギリギリ脱出するマ・リエと一行。ほっとする彼女たちが見たものは、城の中心にあった塔が崩れおちていく様だった。あそこには仲間たちが…!
第272話です。
「外だわ…!」
やった、出たわ!
ようやく出口が見えてくると、私たちの足もさらに速くなった。
走ってきた通路が後ろでガラガラと音をたてて崩れ始めている。でも出口はもうすぐそこだ。
あそこをくぐり抜ければ…!
そして全員が通路の外に走り出たその瞬間、背後からドドォ…ン、と鈍く大きな音が響いた。
恐る恐る振り返ると、出てきた通路が土砂で埋まっていた。
ぎ…ギリギリセーフだったわ…!
私はぐるりと周囲を見渡して、兵士たちも全員無事なのを確認した。
あまりにほっとして、へたへたと腰が抜けたように座り込んでしまう。
それは私以外の全員もそうだったが、何だか遠くから鈍い音が響いてきて、通路が崩れ落ち終わったというのにまだ地面が揺れているのに、全員が不審そうに顔を見合わせた。
何の音と揺れかしら?
すると、ルシアンが立ち上がって、ある方向に向かって腕を上げた。
「聖銀様、あれを…!」
そう叫ぶルシアンの指さす先は、帝都の中心の方角のようだった。
えっ?
あれって…。
まさか。
「と、塔が…!」
帝都の中心にあったはずの大きな塔が、ここにいても聞こえてくるくらいの轟音と地響きと共に、崩れていくではないか。
な、なに、どうなってるの。
どうしてあんな大きな塔が、崩れていってるの?
それに。
それに、あ…あそこには、炎竜の子どもやヴィレドさんたちがいるはずなのに…!
私は息をのんで、土煙を上げて崩れていく塔を呆然と見つめた。
「姫様!」
呆然としていた私は、ここまで案内してくれてまた傍に来てくれたヤム・イーソンさんにそう呼ばれ、はっとして我に返った。そういえば、名乗っていなかったわね。
でもそうだわ、ぼんやりしている場合じゃない!
何が起きたのか、あそこへ行かなければ。今、すぐに。
私はイーソンさんと、その部下の人たちに向かって言った。
「あなたたちは人々を助けてください。まだ崩れてくるかもしれないし、邪気が流れてくるかもしれないから…少しでも遠くか、高い場所に避難させてください。邪気は低いところに流れるから」
「はっ!」
イーソンさんの部下たちはそう姿勢を正してから走り出して行ったが、イーソンさんだけは違った。
「わかりました。しかし、あれは…」
イーソンさんが、ちらりと城の中の塔があった場所を見やる。
そうよね、心配よね。
イーソンさんの知り合いが、あそこに勤めていたかもしれないもの。
私はひとつ頷いて、彼の腕をそっと撫でた。(続く)
第272話までお読みいただき、ありがとうございます。
マ・リエは塔までどうやって行くのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




