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第269話。力を暴走させそうな黒鋼竜ルシアンを制したマ・リエたちの前で、とうとう神金竜ヴァレリアが目を覚ます。彼女に竜の力となる黄金の木の実を食べさせてみると…。

第269話です。

 彼の背中をさすりながら力を流し入れると、いくらもしないうちにルシアンの中に力が満ちるのがわかった。

 あれだけの能力を持つというのに、驚くほど黒鋼竜の神気と魔力の容量は小さい。私とナギは、ほとんど消耗していない。

 ほんのひとかけらほどの神気を与えられた竜…それが、黒鋼竜。

 それでも真竜よりは強大な魔力を擁しているし、彼らにはない神気を持ってはいるけれど。

 ユニコーンの村で聞かされた昔話を思い出す。それが真実なのだと実感しながら、私はヴァレリア様を覗き込んだ。

 彼女はうっすらと金色の瞳を開けて、私とルシアンをぼうやりと見つめていた。

 やったわ。ヴァレリア様の意識が戻った!

「ヴァレリア様! 目覚められたのですね…良かった…」

 ルシアンも感動に打ちひしがれている。

 タマゴをいくつかの袋に入れたルイとラナクリフ様も、ヴァレリア様を覗き込んだ。

「これが…神金竜のヒトの姿なのね。とっても綺麗」

 ラナクリフ様が、手を口にあててうっとりと言えば、ルイも同意してうん、と頷いた。

 でもマ・リエのほうが綺麗だ、とルイが考えていたことは、私には知るよしもなかったけれど。

 あとは、この黄金の木の実を食べて頂くことが大事ね。

 私はルシアンに頼んで、ヴァレリア様の上半身を起こして、背中を支えてもらった。彼女はグラグラしながらも、ルシアンに寄りかかってようやく姿勢を安定させた。

「力が…足りぬ。このままでは…わらわがしなければならないほころびを閉じることも…ままならぬ…」

 ルシアンの肩口にくったりと頭を傾けているヴァレリア様に、私は黄金の木の実を差し出した。

「ヴァレリア様、これを召し上がれますか?」

「…これ…は。なんと…黄金の、木の実ではないか…」

「はい」

「そなた…ら、どこで、これを…」

「聖銀竜の唯一の生き残り、ナギの姉ナユが、はるか昔にナギのために植えていたものです。今はナギよりも、ヴァレリア様のほうが必要です。どうか、召し上がってください」

「そ…うか。ナギ…ナユのことは、知っておる。共にほころびを、封印したこともあった」

 そうだったのね。

 私の中のナギが、感動して胸を熱くさせるのを感じ取りながら、私は黄金の木の実をヴァレリア様に差し出した。

「ありが…とう」

 ヴァレリア様はゆっくりと細く白い腕を上げて、木の実を私から受け取り、頭を傾けてかしり、と白い前歯で食んだ。

 かしり、かしり、かしり。

 しばらくの間、ヴァレリア様が黄金の木の実を食べる音だけが、洞窟内に響いていた。

 私たちはかたずをのんで、ヴァレリア様を見守る。

 やがてすっかり実を食べ終わったヴァレリア様は、ほう…とため息をついて己が胸に手を当てた。

「力が…体内に巡るのを感じる。黄金の木の実を食べたのはいつぶりじゃろう。非常に美味であった、礼を言うぞ、そなた…」

 とろりとした蜂蜜のような黄金の瞳で見つめられ、私はどきりとしながら姿勢を正した。(続く)

第269話までお読みいただき、ありがとうございます。

とうとうヴァレリアが目覚めましたね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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