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第267話。力を暴走させる黒鋼竜ルシアンを止めるべく、マ・リエが発した言葉とは。黒鋼竜とは情が深いのだなと感心するマ・リエに、ナギがヴァレリアのためにあることを提案する。

第267話です。

「ルシアン! やめて! ルイが凍っちゃう! 外にいる人たちも、このままでは死んでしまうわ!」

 チューブからパイプに伝わった冷気が、外の通路も凍らせていっているのがわかる。このままでは危険だ。

 外の通路にいる兵士たちは、ほとんど魔力をもたない只人たちだ。皆、凍死してしまう。

 けれどルシアンは止まらなかった。

「ヴァレリア様をこんなめに合わせた者たちなど、知るものか…!」

「ルシアン、お願い落ち着いて。ルイはどうなるの?」

「………」

「お願い、私たちの仲間もいるし、何より協力してここまで案内してくれた人だっているのよ。ね、落ち着いてルシアン」

 そこで私は、彼を止める最も効果的な言葉を思いついた。

「ヴァレリア様のタマゴだって、凍り付いてしまうわ。そうしたら、無事ではいられないわよ」

 ビクッ、と肩を揺らしたルシアンは、あわてて周囲を見回し、今にも凍り付きそうになっているルイと、彼が抱えているタマゴの入った袋に目を留めた。

 それから何度も何度も大きく息を吸い込んでは、己を止めようとぎゅっと瞳を閉じる。

「ヴァレリア様も手当をしないと。ね?」

「…はい」

 ふうっとため息をついたルシアンは、私の言葉に対してやっと頷いてくれた。

「わかり…ました」

 すると、白く凍り付いていた部屋も天井も、すうっと氷が消えてなくなり、ただ凍り付いていた証として濡れているだけになった。

 冷気をこんなにも操ることができるなんて…黒鋼竜の中でも、ルシアンは本当に力が強いのね。黒鋼竜が操れるのは、冷気だけではないけれど。

 それにしても。

 黒鋼竜は情が深いのね。

 私はエレサーレのことを思い出した。

 エレサーレもルシアンも、守ろうとした者を害されたときの激情は凄まじかった。ルシアンはまだ少年なのに、これほどの力をふるうことができるなんて。

 ヴァレリア様が生きていて、本当に良かったわ。

 彼女が殺されでもしていたら、ルシアンもエレサーレと同じようになっていたかもしれない。

 その時、私の中のナギが、私に語りかけてきた。

『マ・リエ、黄金の木の実を持っておろう。あれをヴァレリアに与えるのだ』

 えっ、あの黄金の木の実を?

 あれはナユがナギのために植えた木からとれたものだから、彼のためにと持ってきたのだけれど…いいの?

 ナギはそれで、いいの?

『そうだ。あれは姉上が我のために残してくれたもの。だから、我が食さずとも、我が必要と思う者に使ってもよいのだ』

 確かに、ナギに効くということは、黄金の木の実は神竜に効果を示すもの。つまり、ヴァレリア様にも効果はあるわよね。

『今の我はほとんど回復している。必要なのは、ヴァレリアの方だ』

 わかったわ、ナギ。

 あなたがそうしろというのなら。(続く)

第267話までお読みいただき、ありがとうございます。

黄金の木の実はヴァレリアに効果があるのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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