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第258話。アトラス帝国元大将軍ヴィレドたちは、アトラス帝国皇帝のいると思われる扉の前に辿り着く。その扉は異様な様子をしていて…。開くためにヴィレドが行ったこととは。

第258話です。

「この先にも、陛下の配置した近衛兵がいるはずだ。その者たちを運び出す人員がいる。お前、一度下へ下りて、応援を連れてきてくれ」

「わかりました」

 煙玉がおさまった室内で、倒れた近衛兵たちを、ヴィレドの命じた兵士が連れてきた応援の者たちが連れ出してゆく。

 そうやって、どれほど上がってきただろうか。

 たどりついた部屋には、誰もいなかった。

「まだ先がある。上るぞ!」

 ヴィレドは更に上を目指す。見張りの近衛兵がいなくなったということは、目指す最上階が近いということかもしれない。

 最早静かに入室することさえせずに、バン!と音をたてて扉を押し開ける。そこにも、誰ひとりいなかった。

 ただ…。

「どうやら、ここが最上階のようだな」

 ヴィレドが呻いた。

 彼の目の前には、どろりと歪んだドアがあった。

 その形は、ドアの形をしている。

 けれどその存在そのものが、様々な色を混ぜ合わせてかき混ぜたかのように、ドアの形状をしていない。

 押し開けようとしても、その中に飲み込まれてしまいそうだ。

「触れることが叶わぬ、虚無の世界への入り口、か…」

 ヴィレドは懐から、四角い箱を取り出した。

 それはここに入る前に、マ・リエから手渡されたもの。

『これはおばば様からお預かりした、私の声を届ける魔道具です。この中に、ヴィレドさんが進むのに困ることがあった場合に備えて、歌を入れておきました。いざという時、使ってください』

「マ・リエ殿…感謝いたします。今こそ、使わせていただきます…!」

 ヴィレドはその白い四角い箱を、異様な渦を巻くドアの表面へ向けた。

 そしてスイッチを入れる。

 白い箱に開いたいくつもの黒い穴から、マ・リエの歌声が響いてきた。

「ラララ…行く先を塞ぐものよ。光を集め、その先へと進むべく、我は命じる。扉は扉たれ、道は道たれ。先へ進もうとする者を阻むことなく、その道を開けよ。呪いは祝福に、痛みは光に、暗闇は悦びへとその姿を変えて、この者を通したまえ。通したまえ…」

 マ・リエの歌の途中で、呪いの扉は白い光に包まれ始め、やがてきらきらと細かい光の粒となって消えていった。

 ゆっくりと歌うマ・リエの歌が終わる頃には、そこには扉はなく、ただ扉があった木枠だけが残されていた。

「相変わらず、すごい威力だな。まあ、助かった。これで…」

 扉があった場所へ向かって一歩踏み出したヴィレドの足が止まった。

「うっ…!」

 扉の先は、漆黒の闇が広がっている。

 渦巻いてすらなく、ただねっとりとした闇があるばかりだ。

 まだ扉をくぐってさえいないのに、その不気味さにヴィレドとその伴の者たちは、体を硬直させた。(続く)

第258話までお読みいただき、ありがとうございます。

扉の先には何があるのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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