第253話。神金竜ヴァレリアのいる丘にたどりつき、彼女がいると思われる場所へと続く扉をくぐるマ・リエたち。階段を下りると、その先にあった扉は金色に輝いていて…?
第253話です。
部屋の奥には地下へと続く階段があって、両脇に警備兵が立っていた。
「ご苦労さま」
微動だにせず立っている二人に思わずそう声をかけると、ぴしっと更に姿勢を正して、はっ、と敬礼してくれた。
私の後ろで、ルイがふふっと笑う気配がする。
「なに?」
「いや…マ・リエらしいなと思ってさ」
私らしいって、何が?
首を傾げながら、イーソンさんに続いて階段を下りる。階段はそれなりに整備されており、内部は綺麗だった。
だが少し進むと、天井の斜め上のほうに穴があき、そこから細いパイプのようなものが、私たちの進行方向…つまり奥の方に向かって何本も張り巡らされていた。
その細いパイブの中を、魔力のような気配が流れているのを感じ取って、私はイーソンさんに問いかけた。
「あのパイプは、一体何なのですか?」
するとイーソンさんは私を振り返ってこう答えた。
「神金竜を封じるためのものだ、と皇帝陛下がおっしゃっているとは伺っています。しかしながら、詳しいことはわかりません」
「そうなのね…」
イーソンさんは続けた。
「神金竜の間には、皇帝陛下とごく一部の側近しか、入ることはできないのです。私は神金竜の間の外で待機し、陛下をお守りしているだけですので…」
「わかりました。ありがとう、イーソンさん」
すると彼は少し目尻を下げて、私に少しお辞儀をすると、また階段を下り始めた。
私は私を振り返っているルイと、後ろに続くラナクリフ様やルシアン、ボルドーさんと顔を見合わせた。
「それではとにかく、急ぎましょう」
私がそう言うと、皆は頷いて足を速めた。
やがて階段の下に、光り輝く扉が見えてきた。
「金色の、扉…?」
その扉の前に立っていた警備兵二人が、両脇にどいてくれた。
「ありがとう」
やっぱり御礼を言ってしまう私に、ルイがちらりとその視線をよこす。
階段を下りきったところに広い空間があり、テーブルや椅子が置いてあって、何人かの兵士が待機していた。
扉はその奥にある。
「異常ありません」
私とイーソンさんの前にやってきて報告するのが、ここの隊長さんなのだろう。
私は彼に向かって命じた。
『扉を開けて、私たちを通しなさい』
「御意」
隊長さんは頭を下げると、腰からぶら下げた金色のいくつもの鍵を使ってロックを開き、扉の前から後方へ後ずさった。(続く)
第253話までお読みいただき、ありがとうございます。
扉の奥には何があるのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




