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第249話。元アトラス帝国大将軍ヴィレドは、少数精鋭を率いて塔を上る。狭いため魔法師はいないだろうが、マ・リエの歌が届かなかった者に対して、ヴィレドがとった作戦は…。

第249話です。

「煙玉を用意して、魔法師を呼べ」

「はっ」

 皇帝はこの塔の上に、たった一人でいるはずだ。

 そこへ行くためには、塔の内側の壁を這うように設けられている細いらせん階段を上がっていくしかない。数か所あるフロアを通り抜けて上っていくしかないが、そのフロアには手練れの近衛兵や護衛兵たちが、皇帝のための守りを固めている。

 きっと上のほうには、マ・リエの歌も届いていないだろう。

 こちらも精鋭たちを集めたが、狭いらせん階段では横に二人並ぶのがやっとだ。フロアから階段に押し込まれるように剣をふるわれては、こちらの分が悪い。

 そこで使うのがこの方法だ。

 用意した煙玉には、麻痺と睡眠の効果が込められている。これを一階に敷き詰めて自分たちは外に出て、魔法師によって火をつけ、風を巻き起こして上階へいくようにするのだ。

 おそらく狭い塔の中では、魔法を使う魔法師はフロアに用意されていないはず。

 この方法で確実に上階の兵士たちを一掃できる、とヴィレドは踏んでいた。

 塔の中の密閉性が、こちらが目張りなどをしなくとも煙が外に漏れることを防いでくれるだろう。

 フロアには窓がついているだろうが、高い塔の上、危険であるから大きく開くようにはなっていないはず。

 煙玉を大量に炊くことによって、塔の換気能力に優る効果を得られると、ヴィレドは考えていた。

「煙玉、準備できました」

「よし、皆外に出ろ。ドアを閉めたら魔法師に火をつけさせるのだ」

「はっ」

 しばらくすると、閉まっている一階の小窓が曇って、中が何も見えなくなった。煙玉は順調に燃え広がっているようだ。

 中から数人の咳き込む音が聞こえて、すぐに静かになった。さすがはこのためにしつらえた、即効性の麻痺と睡眠効果だ。

 小窓を覗き込んでいると、やがて室内の煙が消えて塔の中が見えるようになった。床には数人の、先程こちらを振り返った兵士たちが倒れている。

「よし、煙は上に上がったようだ。我々も入るぞ」

 ヴィレドは精鋭たちにそう声をかけて、扉を開いた。万が一の時後方支援ができるように、魔法師二人も連れていくことにする。

 これで、うまく煙が上に上っていれば、戦闘は最小か、よければ無しで済むことだろう。

 城の中の王宮も、同じ方法で制圧することになっている。

 あちらはうまくいくだろうか…とちらりと考えて、ヴィレドは首を振った。ほかのことなど考えている暇はない。

 今は、己がやるべきことだけを考えなければ。(続く)

第249話までお読みいただき、ありがとうございます。

ヴィレドはうまく皇帝のところまでたどり着けるでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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