第247話。マ・リエが歌う、軍人たちの隷属紋や従属紋を打ち消すための歌とは。その効果とはいかに。そして城と塔を守る者たちを守るために、彼女が歌う歌と、その効果は。
第247話です。
ナギの魔力が込められた歌声を、風魔法とスピーカーで拡散する。
「人の子らよ 聞くがよい
その自由奪うものは 何であろうとも許さぬ
その身縛る鎖よ 光の花に力を吸い取られ 断ち切られよ
砕け散り 消え去れ
紋に込められし悪しき魔法の力よ その邪気を祓い真の光となりて 彼らの力となれ
束縛よ 消え去るがいい
さあ 浄化されよ…!」
あちらこちらでいくつもの半透明の花が、人々の頭上に現れた。その下に隷属紋や従属紋を打たれた人がいるのだろう。
その花がキラキラと輝くと、人々からうっすらと黒い煙が立ち上って、花に吸収されていく。
そして。
キン!
キン!
キン!
城の入り口の広場に、半透明の花が散る音が、いくつもいくつも響き渡った。
これで大丈夫のはず。少なくともこの広場と、スピーカーや風魔法で届く範囲にいる人たちの隷属紋や従属紋は、はじけ飛んだはずよ。
人々はその音が、何かの効果音かと思ったようだ。半透明の花が現れ、それが音とともに消えてゆく様子に大喜びしている。
それから次にやるべきことは。
「城と塔を守っている者よ そしていま城と塔の中にいる者よ
これより城と塔の中に入る者を
なんびとたりとも阻止してはならぬ
いま城と塔を守りし者 城と塔の中にいる者たちは皆
城の前の大木のもとに行け
誰も騒がず 誰にも告げず 木のもとへ行け」
すると、門を守っていた兵士たちは顔を見合わせることもなく、黙って槍を下げ外に向かって歩き始めた。
城の中からも続々と兵士たちが出てくるのに、ヴィレドさんが馬を寄せてくる。
「ありがとうございますマ・リエ殿。それでは私どもは、城の中に入ります。あなたと風竜の長殿とルシアン殿は、このまま私の部下であるこのボルドーと共に、ヴァレリア様の丘へ向かってください」
「わかりました。お気をつけて」
「はい。きっと大丈夫。あなたがいれば、私たちは勝てます」
すっかり勝敗の話になっているヴィレドさんに反対することなく、私はただ彼に向かって微笑んで、ボルドーさんに話しかけた。
「ボルドーさん、道案内をよろしくお願いします」
「もちろんです、マ・リエ殿。こちらこそよろしくお願いいたします」
ヴィレドさんの忠実な部下であるというボルドーさんは、私たちに向かってそう深々と頭を下げた。(続く)
第247話までお読みいただき、ありがとうございます。
いよいよヴァレリアの待つ場所へ赴くことになるのですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




