第243話。邪気のことは自分だけですると言っていたナギに対して、マ・リエが語る、この世界を守りたい訳とは。そしてとうとうやってきた、アトラス帝国建国祭の日に…?
第243話です。
「以前、ナギは言っていたわよね。私たちは融合して一体になったんだって」
『ああ』
「だから、私に向けた敬意はナギに対するものでもあるって言ってたわよね。つまり、ナギの使命は私の使命でもあるの」
『しかし…』
言い募るナギに、私は子竜たちをそっとベッドに下ろしながら言った。
「もう、私もこの世界の住人になっているのよ。この世界で守りたい人がたくさんいるの。虚無にも邪気にも、この世界を壊させたくないの」
私はすやすやと安らかに眠る子竜たちを撫でた。
あたたかい。
この安らぎを、壊させはしない。
「私、頑張るから…ね?お願いよ、ナギ。一緒にやらせて?」
するとナギはローズクォーツ色の瞳を閉じて、静かに息を吐いた。
『ありがとう…マ・リエ。感謝する』
その声は、心なしか少し濡れているように感じた。
そして、とうとうアトラス帝国建国祭の日がやってきた。
早朝に私たちは、旅芸人として帝都に入ることになっている。
同行するのは、ヴィレドさんとその部下三人、ルイ、ダグ、風竜の長ラナクリフ様、ルシアン、そして出発寸前まで同行を訴え続けてとうとう認められたタニアの九人。私を入れて十人だ。
私はおばば様が心配して着付けてくれた邪気祓いのドレスを身に纏い、その上に薄いローブを着て、花とリボンで飾りつけ、色とりどりの花冠を青銀色の頭に乗せた。
ドレスでうまくしっぽを隠したタニアも、同じように飾りつけられている。
男性陣は上着にリボンの飾りをつけて、花冠の代わりに首に花でレイを作ってかけていた。
ルイとダグはユニコーンの姿となり、その角には白い布とリボンを巻いて花を飾り、頭には花冠、たてがみと尻尾にも花とリボンを編み込んで飾りたてた。ルイには私が、ダグにはタニアが乗り、ほかの人たちが乗る馬たちにも、同じようにユニコーンっぽく角を作って、大仰に飾りをつける。
これでルイとダグがユニコーンだとわからなくなった。
「それじゃ、帝都に入りますよ」
先頭を行くヴィレドさんとその部下三人は、一人は女性だったが、その顔がわからないように布を顔にぐるぐる巻きにしていて、やはり花を散らしていた。
「帝都には結界が張られていますから、中の様子は入ってみなければわかりません。皆さん、注意してください」
そう言われながら、帝都へ入る大門を抜けるための列に並ぶ。
私たちの番になって、門番や兵隊たちが私たちを検分した。
私たちは派手な姿をしているけれど、旅芸人という設定だし、祭りで様々な土地や国から商人や芸人が来ているため、目立つことはない。
楽器を持った男性陣と、飾り立てた私とタニアとラナクリフ様を調べる兵隊たちに、私たちは内心ヒヤヒヤしながら待っていた。(続く)
第243話までお読みいただき、ありがとうございます。
さあ、どうなることでしょう。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




