第238話。竜の木の実を生らす大木がナギに、マ・リエに持っていってほしいという特別な実をマ・リエが取ろうとすると、精霊がそれを止める。その悲しい理由とは。
第238話です。
「あなたはたった一人になっても、ナギを待っていてくれたのね…長い…八千年もの間…待っていてくれたのね」
すると大木は深いため息をついたように感じられた。
『八千年…そんなに経ったのか。どうりで私も年をとるはずだなあ』
「ええ…そうよ。でもナギは帰ってきたわ。待っていてくれて、ありがとう」
その言葉に、大木はもう一度深い息を吐いた。
『ああ…こちらこそ、帰ってきてくれてありがとう。ずっと…ずっと待っていたよ。けれど、私は一人ではなかった」
えっ?どういうこと?
私が顔を上げると、大木はゆらゆらと木の枝を揺らした。その枝には本来ついているだろうたくさんの葉っぱはほとんどなく、少しだけ葉がついているだけで、この木の年齢を感じさせた。
『私を植えたナユがここに来なくなっても…たくさんの鳥や動物、虫たちが私を訪れて楽しませてくれた。だから、私は一人ではなかったのだよ…』
「そうだったのね。楽しく過ごせていたのなら良かったわ」
私は安堵して、また木の肌に頬をすり寄せた。
『ここらへんに生えている竜の木たちは、みな私の子孫たちだ。鳥や虫たちが、種をまいてくれたのだよ。木々に生っている竜の木の実は、自由に持っていきなさい』
「はい」
私には、大木が微笑んだように感じられた。
『さあ、私が中心にずっと隠していたこの…黄金の木の実を持っていくがいい。ナユが私に、ナギへと託したかったものだよ』
「黄金の、木の実?」
私が上を仰ぎ見ると、さわさわ…と少ない葉っぱがざわついて、その奥に光るものが見えた。それが生っている枝がゆっくりと下りてきて、私の目の前にその実をさらす。
「これは…」
それは見事に輝く、黄金の実だった。通常の竜の実よりも大きく、上半分が小さめで下半分が大きめの、洋ナシのような形をしている。
『神竜の力になるものだ。さあ、持っておいき』
大木に促され、私は黄金の木の実に手を伸ばした。
すると精霊があわてたように、私の耳元で囁いたのだ。
『だめ』
「?」
どうして?
木は持っていってくれと、言っているけれど。
それにこれを渡すことが、ナユの気持ちでもあると。
『それを取ると…この木は枯れてしまうの』
えっ?
なんですって?
私はあわてて、木の実に伸ばしていた手を引っ込めた。
大木はそれを責めるように、さわさわと葉っぱを揺らす。(続く)
第238話までお読みいただき、ありがとうございます。
マ・リエは一体どうするのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




