第235話。精霊の声に導かれマ・リエがやってきたのは、竜の木の実が生っている、巨大な木だった。その巨木がなぜここに植えられているのか、驚くべき真実を聞いたマ・リエは…。
第235話です。
『竜の木の実があるぞ、マ・リエ』
ナギがそう言う先には、確かにあの時食べた竜の木の実があるではないか。
精霊が私に囁く。
『…あげる…木があげるって…』
本当?それは有り難いわ。
その周辺には、竜の木の実が生る木がまとまってたくさん茂っていたのだが、特に中央にある一本の木は、今まで見たこともないような巨木だった。
なんて…見事な木。
すると、その木を見たナギがつぶやく。
『竜の木はそこまで大きくならないものだが…この木は信じられないくらい大きいな』
ええ、そうねナギ。首が痛くなっちゃうくらい。
私の耳元で、精霊が飛び回りながら囁いてきた。
『…むかし、むかーし…あの竜の巣に住んでた、ぎんのりゅうが…ここにうえたんだって…木がいってる…』
えっ?
それって…。
『…ずっと、ずうーっとあとに…おとうとが来るから…みをあげてって…いわれたって』
ナギ…もしかして、それって。
精霊は更に語りかけてくる。
『…だから…いっぱい…いーっぱい、まりょくとしんきをためたって…』
私はおそるおそる、聞いてみた。
「その…銀の竜の名前は?」
『ぎん…ぎんのりゅうだよ…あの巣には一頭しかいなかった、りゅうだよ…』
ナギ。
あなたのお姉さんは、こんなにも…あなたを想っていてくれたのね。
小さな小さな木の苗を植えて、その木に傷を負ったまま消えてしまった弟への想いを語り続けて、きっと時間のあるときはいつも、この木に力を注ぎ続けてくれたのね。
いつか来る、弟のために。
ナギに意識を向けると、彼は静かに涙を流して泣いていた。
私の頬にも熱い水滴が、いくつもこぼれて落ちていく。
私は思わず、その木を抱きしめていた。
『よく…来てくれた…』
低い男性の声が、私の内に響いた。それは年老いた巨木の声に違いなかった。
『ナユと共に…私も待っていたよ…』
「ああ…ありがとう、ありがとう」
私は思わず、抱きついた木の肌に頬ずりしていた。
熱い涙がじわりとにじんで私の頬を滑り落ち、大木の肌を濡らした。(続く)
第235話までお読みいただき、ありがとうございます。
ナユは弟のために、本当にいろいろなことをしてくれていたのですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




