第230話。封印された扉は、マ・リエ以外の者は通さないようになっているようだった。その下に入っていくマ・リエ。彼女の中のナギやマ・リエにとって心地よい空間になっているそのわけとは?
第230話です。
「おお、扉が…」
黒鋼竜の一人が、その下に現れた階段に足を下ろそうとした瞬間、扉はバタン!と再び閉まった。
「うわっ!」
彼はあわてて身を引いたので、ケガなどしなくてすんだけど、挟まっていたらと思うとヒヤリとしたわ。
「この扉は、聖銀様の御力に反応して、聖銀様だけを通すようにできているのだろう。我等は外で待つほかない。この中に何があるのか…とても不安ではあるが、通れるのが聖銀様だけである以上、聖銀様にお任せするほかはない」
ゾロさんがそう話すと、ほかの皆も一様に頷いた。
「姫様、お気をつけて…私もご同行できないのは、とても無念ですが」
「マ・リエ、何かあったらすぐに叫ぶんだぞ。どうにかして中に入るから」
タニアに続き、ルイが無茶なことを言うのに、私は少しばかり可笑しくなって微笑んでみせた。
「…っ…」
私のその微笑みを見たルイが、少しばかり頬を染める。
「大丈夫よルイ、タニア、それに皆さん。ここにはナユの気配があります。彼女の封印ならば、ナギに害を成すようなことはないでしょう」
皆は不安そうではあったが、私は笑顔で皆を見回し、もう一度封印に力を注いだ。
キイイ…と、もう一度扉が持ち上がる。私は自分が通れる幅にまで扉が持ち上がってから、階段に足をかけた。
大丈夫、扉は落ちてこない。
やっぱり、私は通れるんだわ、良かった。
私が足を下ろすたびに、階段が光って足元を照らしてくれた。
階段は地下室に続いているようだ。床に足を下ろすと、途端に周囲がぱあっと明るく光って、部屋の様子が見えるようになった。
「わあ…」
ふうわりと、あたたかい。
気持ちいい。
その心地良さは、部屋の中央に鎮座されている玉から流れ出ているようだった。
私の中のナギが、ほう、と声を上げる。
『これは…竜玉だ』
竜玉ですって?お話の中には聞いたけれど、本当にあるのね。
『竜玉とは、神竜の体内にごくまれに生まれる宝玉のことだ。それは神気を集める力を持っているという。八千年の前には神竜もそれなりの数がいたから、この竜玉はその竜たちの誰かのものなのだろう』
なるほど、そういうものなのね。
『この部屋が作られ、ここにこの玉が置かれて以来、この竜玉は神気をため込んでいたのだろう』
えっ、それって…つまり。
『つまり、八千年溜め込まれた神気ということだな。…ああ…我に神気が流れ込んでくる。我の傷はずいぶんとよくなってきているが…これでかなり回復できるだろう』
そうなの?この竜玉から流れ込んでくるあたたかな力は、私にとってもとても心地よいけれど、ナギの回復に相当な効果があるのなら良かったわ。
ここは、ナユの用意してくれた部屋なのかしら?(続く)
第230話までお読みいただき、ありがとうございます。
ナギが回復するとよいですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




