第228話。ドラゴン会議の数日後、もともと黒鋼竜たちが領地にしていた場所へと、黒鋼竜たちに連れられてやってくるマ・リエとルイとタニア。その場所とはどんなところなのか。
第228話です。
数日後、私とルイとタニアは黒鋼竜に乗せてもらって、昔マ・コトのタマゴが盗まれる前に黒鋼竜たちが住んでいた場所にやってきた。
そこはやはり山間で、登ってくるのが大変そうな場所だったが、緑が豊かできれいなところで、私は乗せてくれているゾロさんの首元から、うわあ…と下を見下ろした。
「きれいなところですね」
ゾロさんは私を振り返って、瞳だけで微笑んだ。
「そうでしょう。我々の自慢の住処でした」
「姫様、あちらをご覧ください、滝がありますよ!」
「本当ねタニア。きれいねえ」
別の黒鋼竜に乗せてもらっているルイを振り返れば、彼もまた眼下の光景に目を奪われているようだった。
こんな美しい場所に住んでいたのに、悪い人はいるものね。
マ・コトのタマゴを盗まれて、もっと険しい場所に引っ越すことになってしまったのだものね。
実はここに私たちがやってきたのには理由がある。
ナユが残した足りないウロコを探して、黒鋼竜たちが昔住んでいた場所にあるのではないかという話になった。
何頭かの黒鋼竜たちが訪れ、幾日もかけて探したところ、どうやら隠し部屋が見つかったようなのだ。
そこはどうやっても開くことができなくて、封印に語り掛けてみたところ、聖銀以外には開かない、と応えられたという。
ここがナユのウロコのある場所なのかはわからないが、ほかにはどう探しても見つからなかったというし、可能性は高いだろう。
なので、私が向かうことになったのだが、声を上げたのはルイとタニアだ。
「オレも!マ・リエが行くならオレも行く!」
「私もです!姫様をお守りするため、同行させてもらいます!」
今回は断る理由も特になかったため、二人にも同行してもらうことになったのだ。
私を乗せてくれた黒鋼竜のゾロさんは、女性二人くらい楽勝ですよと、私の後ろにタニアも乗せてくれた。
彼女は私の背後できゃっきゃと少女らしく楽しそうにしていて、私とお出かけできるのが嬉しくて仕方がないらしい。
そんなタニアを背中に感じていると、私まで気持ちが高まってくるのを感じた。
「着きましたよ、聖銀様。つかまっていてください」
ゾロさんがそう言って、翼をはためかせる。
降下するのだ。
「タニア、私につかまって」
「はい、姫様」
私は二人をゾロさんにつないでいるベルトをしっかりと握って、衝撃に備えた。急激に高度を下げられて、息が止まる。
でもそれは一瞬で、ゾロさんはすぐにゆっくりとした降下をしてくれた。自分たちだけだったらすでに地面に着いているだろうに、私たちを気遣って少しずつ下りてくれる。ルイを乗せてくれている黒鋼竜も、護衛にとついてきてくれたほかの黒鋼竜たちも、同じようにゆったりと下りていった。
やがて彼らの足が地面に着いて、膝を曲げて衝撃をやわらげてくれる。ゾロさんは首を下げてベルトを外し、大地に私たちを下ろしてくれた。(続く)
第228話までお読みいただき、ありがとうございます。
黒鋼竜たちが住んでいたのは、とても美しい場所だったのですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




