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第226話。マ・リエに帝国の王都で歌を歌って欲しいと頼む、元大将軍ヴィレドだったが、彼女の歌声を王都中に響かせるためにとる方法とは…。また、黒鋼竜のおばばが望むこととは。

第226話です。

「マ・リエ殿は、人間の旅芸人として建国祭に入城していただき、歌姫として歌を歌っていただきたいのです。守りには傍目には混じりものとは見えない真竜の方々にお願いしたい」

 ルイが何か言いたそうに口を開いたが、結局その口を閉じた。

 ユニコーンであり、人型になっていても額に小さな角がある彼らが人間に擬態するには、魔法師にまじないをかけてもらうしかない。

 それでも接触したりすればまじないが解けて、角が見えてしまう。

 人が多い祭りの日に、そんな危険は侵せないだろう、とルイは思ったのだろう。

 確かに真竜たちならば、皆ウロコは背中にあるので、服で隠せるため、ぱっと見人間に見えるはずだ。

 ヴィレドは私を見て、姿勢を正した。

「部下たちには、全員室外にいるように指令を出しておきます。マ・リエ殿には、隷属紋を壊す歌を歌っていただきたいのです」

 なるほどね。それで、皆に外にいるように言っておく、というわけなのね。

 でも。

「いくら私が全力で歌ったとしても、王都中に響くわけにはいかないでしょう。それはどうするのですか?」

 するとヴィレドさんは、光竜の長スーリエ様を振り返って、こう言った。

「この中に、風竜の長はいらっしゃいますでしょうか」

「はい、私です」

 ラナクリフ様が立ち上がり、スーリエ様は彼女に手を差し伸べて紹介した。

「彼女が風竜の長、ミンティ・ラナクリフだ」

 ヴィレドさんはラナクリフ様に向き直って、ひとつお辞儀をした。

「ラナクリフ様、一緒に来てはいただけませんか。そしてあなたの風の力をもって、マ・リエ殿の歌を王都中に届けて欲しいのです。できますか?」

 ラナクリフ様はにっこり笑って私を見て、気取ったふうに話した。

「もちろん。私の風の力をもちて、彼女の歌を届けよう。でも広いアトラス帝国の王都の隅々まで届けるのは、ちょっと難しいかもしれないな。できるだけ、中央広場に近い位置まで出てきてくれるように、申し伝えておいてもらえるといいと思うよ」

「わかりました。そのように伝えます」

 ヴィレドさんが頷く。

 おばば様が、全員を見渡して言った。

「そうすると、同行するのはヴィレド殿とラナクリフ様ですな。ヴァレリア様のこととなるならば、うちのルシアンも連れて行ってくだされ。彼にはいにしえよりの、ヴァレリア様との約束がございますゆえ。ヴァレリア様が目覚められたとき、お傍にいなくてはなりませぬ」

 そうだったわよね。ルシアン…本名はリュシエンヌ・エンダーだったわね。

 彼は、創世のヴァレリアに仕えていた一族の最後の子孫。

 名前で記憶を受けついでいて、ヴァレリア様が目が覚めたらまた私に仕えてくれるかと言ったとき、ぜひにと答えた記憶は名前と共に大事に持っていた。

 だから、ヴァレリア様が目覚めるときには、お傍にいなくてはならないわね。

 ルシアンは手の甲にウロコがあるから、手袋をすれば大丈夫ね。(続く)

第226話までお読みいただき、ありがとうございます。

マ・リエの歌声は王都中に響くのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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