第216話。ドラゴン会議にて、水竜の砦でのことを謝ろうとした帝国の第三皇子ガイウスに、水竜カルラ・エラストリと炎竜リンガル・リヴェレッタの怒りが爆発する。マ・リエはそれを止めるべく…。
第216話です。
「それは、水竜の砦を占拠しようとしたときのことですか?」
「そうだ!いや、そうです!ほんとうに」
「そうですか~…」
みるみるうちにエラストリ様のお顔が般若のようになり、息を吸い込むなり大声で叫んだ。
「き・さ・ま・か・あ~~~!」
「はい、わたしがっごぼごぼごぼ!」
「貴様が、貴様らが、あの戦を起こした張本人だったのですか!そうですか、ならば死になさい!」
「ごぼごぼごぼ!」
たっ大変!
ガイウスさんとヴィレドさんの頭が水球にすっぽりと覆われて、二人が溺れかけてる!
私はあわててエラストリ様に駆け寄って、般若のような彼女に抱き着いた。
「ま、待って、待ってくださいエラストリ様!落ち着いて!」
「いや、おれもその意見にゃあ賛成だなあ…」
ゆらり、とリヴェレッタ様が立ち上がって、恐ろしい形相でガイウスさんたちを見る。
「首から下は、おれが黒焦げにしてやるよ…」
あっまた部屋の温度が上がり始めてるし!
二人とも、落ち着いて、お願い!
真竜の皆さんも止めて、早く!
私の心の声が届いたかのように、ラナクリフ様が立ち上がった。
「いい加減にしなよ、二人とも!話を聞くんでしょ!」
すると少しだけ水球が歪みも温度も揺らいだが、結局は水球が消えることもなければ、部屋の温度がそれ以上下がることもなかった。
まずいわ、このままじゃあ二人が…!
その時低い声が、緊迫した部屋の中を冷静に響いていった。
「やめよ、二人とも。ヴァレリア様の居場所がわからなくなるではないか」
「…!」
それは地竜の長トリスラディ様だった。さすがはラナクリフ様の次に年長の御方、取り乱すことなく正論を諭してくださった。
むむう…と低い声が、炎と水の竜の長の口から漏れたが、水球はまた嘘のように水滴一滴も残さず消えうせ、部屋の温度も元に戻った。
「ごほっ、ごほごほ…っ!」
ガイウスさんとヴィレドさんは床に崩れ落ちて激しく咳き込み、荒い呼吸を繰り返している。水死はかろうじて免れたようだ。
ああ…良かった…私はエラストリ様に抱き着いていた腕を離して、ぜえぜえと喘ぐ二人を振り返った。(続く)
第216話までお読みいただき、ありがとうございます。
確かにヴァレリアの居場所を聞き出さないとですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




