第214話。ドラゴン会議にて、捕らわれた炎竜の子どものことを思って涙をこぼす炎竜の長リヴェレッタをなだめるマ・リエ。取り返すには戦争が最も簡単だと言われて、マ・リエは…?
第214話です。
「せいぎん、さま。わたし、わたし、は」
「うん」
「あの子を…百年前に盗まれたタマゴのことを…忘れたことは、ありません。たくさん探して…探して…とうとう見つからなくて…でももしかしたら、どこかで孵って…優しい親の元で、元気に健やかに幸せに…暮らしているんじゃないかって…そう、おもって」
「うん」
「そう…思うしか、なくて。百年の間、あの子の両親はずっと…あの子を探し続けているのです。まさか…まさか、邪気に沈められたまま孵って、赤子の頃からずっと…未だに、邪気の中にいるなんて…言えるはず…ありません」
「…うん」
「ど…して、どうして…なぜ、あの子が」
「落ち着いて、リヴェレッタ様。お辛い気持ちはとてもよくわかるけれど…落ち着いて、続きを聞きましょう?」
「は、は…い」
私の両手をぎゅっと握り締めて、リヴェレッタ様は涙のこぼれる瞳を幾度もまばたき、それでも頷いてくれた。
私はルイとダグを振り返って、そっと頷く。
ダグが炎竜の子どもの状況を引き続き語る間、リヴェレッタ様の両手はぶるぶると震えていた。
竜とは、たとえ血縁関係になくても、同族への情がとても深い。何頭もの竜が出産したタマゴを一か所に集めて皆で面倒を見て、まとめて世話をすることも、関係しているかもしれない。
リヴェレッタ様は、すすり泣きながらすがるように私に言った。
「聖銀、さま。あの子は…あの子は、助けられるのでしょうか…?」
するとそれまで黙っていた黒鋼竜のおばば様が、厳かなほど静かな声で言った。
「最も簡単なのは、戦争を仕掛けることですな」
「そうですね」
真竜の長たちも、一斉に頷く。
私はあわてた。
待って、待って。
そんなことをしたら、たくさんの人や竜が傷つくじゃないの。
私はそれをしたくないから、どうしたらいいか皆さんのお考えを聞きたいと言ったのであって…。
戦争なんて、絶対にイヤ。
私が思わずそう叫ぶと、おばば様は瞳を細めて微笑んだ。
「そうでしょうな。あなた様は、そう言われると思っておりました」
地竜トリスラディ様も続けて頷く。
「我等も、そう思います。だからこそ、武力に頼らぬ平和的な救出方法を考えなければならないのですよね」
「そうです…お願いします…!」
私はリヴェレッタ様を見上げて眉を潜めた。
「お願いします、リヴェレッタ様。平和的にあの子を救出するその方法を、皆様と考えようと思っているのです」
するとリヴェレッタ様は、私の両手を握ったまま、へなへなと再び椅子に腰を下ろした。
「ではその件に関しては、最後に皆で知恵を出しあおう。まずは報告を終わらせてしまわねば。よいな、リヴェレッタ殿」
スーリエ様が静かにそう告げると、リヴェレッタ様はうなだれたままこくりと頷いたので、カルロスさんによって報告が続けられることとなった。(続く)
第214話までお読みいただき、ありがとうございます。
戦争は誰だっていやですよね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




