第208話。邪気に沈められた炎竜の子を助けることは、難しいことだと思うマ・リエ。それは何故なのか。そしてそれを話し合うために、あることに参加しようというと、ルイとダグは…。
第208話です。
「………」
うん。
わかるよ。
私もその子を助けたい。
今すぐにでも帝都に行って、無理やりにでも地下に潜って、邪気からその子を救い出してやりたい。
私になら…私の歌なら、きっとその子を…名前もつけられていないだろう、親の愛も優しい腕も知らないだろうその子を、浄化してあげることができるだろう。
…でも。
「マ・リエ?」
「うん。私もみんなと同じ気持ちよ、ルイ」
「それなら…!」
「その子は、竜の形をしているのよね?」
きっとそうだろうと踏んでそう問うてみると、ルイは頷いた。
「そうだ」
「すぐ近くで見たの?」
「いや、上から邪気の中のその子を見ただけだ」
「それなら…きっと、もうけっこう大きいわよね」
するとルイとダグはお互いに顔を見合わせて、それから二人して頷いた。
「そうだな」
「でも邪気の中に沈められているってことは、足環がついているかもだけど…きっと、まだよく飛べないのよね?」
「きっと、そうだと思う。まだ幼い子竜のようだから。飛べる年齢になっていたとしても、教わってもいないだろうし、練習もできない状態では飛べないだろうな」
「それなら…」
それなら、少し話は難しくなるかもしれない。
私たちはそこに行けても、その子を連れ出すとなれば城の人たちに知られずに、というのは無理だろう。
それではとりあえず邪気だけでも祓えば…といっても、目くらましの魔法はかけられても、私の歌までは隠せない。
厳重な見張りは竜のすぐ近くにもいるだろう。
歌が聞こえてしまえば、やはりバレてしまう。
歌が終わる前に取り押さえられてしまえば浄化もできないし、もしうまく歌が終わったとしても、私たちの存在がバレてしまえば抜け出すことは難しくなる。
一歩間違えば、戦いになってしまうかもしれない。
邪気が外にあふれてしまったり、もしかしたら竜が暴れて城を壊すおそれまである。
城の人たちも私たちも誰も傷つけず、炎竜の子を助け出す方法は、今ここで私たちだけで考えつくことはできないと思われた。
それをみんなに話して、明日開かれるドラゴン会議に議題として提出して、真竜の長たちにも考えてもらおうと言うと、ルイとダグは渋い顔をして唇を噛んだ。(続く)
第208話までお読みいただき、ありがとうございます。
竜の子を助けるには、どうしたらよいのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




