第207話。帝都の城の地下で見つけた、邪気にまみれたあるものとは…。それをユニコーンのルイたちは助けてやって欲しいとマ・リエに頼む。それを聞いたマ・リエは…。
第207話です。
どうしたの?そこで、何かあったの?
その言い方だと、ヴィレドさんの言う通り、ヴァレリア様はそこにはいなかったのでしょう?
とすると、代わりにいたのは…誰?
ルイの代わりに口を開こうとしたダグだったが、顔を上げたルイがそのまま言葉を続けたので、口をつぐんだ。
「そこにいたのは…邪気にまみれた炎竜の子どもだったんだ…!」
「えっ」
炎竜の…子ども?
もしかして…。
「マ・リエが考えていることはきっと当たっていると思う。百年の昔、炎竜のところから盗まれたタマゴから孵った子どもだ。ヴィレドから、帰りの馬車の中でそう聞いた」
やっ…やっぱり。
ということは、只人が…帝国の人たちが、炎竜からタマゴを奪って、城の地下に隠したのね。
助けて欲しいっていうのは、その子どものことなのね?
「あなたたちでは、その子を助けてはあげられなかった、ってことなのね?」
「そうなんだ。その子は邪気の中に沈められていて」
「えっ」
な…なんですって?なんてこと…。
普通の生き物なら、邪気に触れただけで死んでしまうというのに、なまじ真竜であるから、耐性があるんだわ。
そんな強い毒の中に、産まれる前から置かれて…幼子が毒の中のたうち回る様を想像して、私は口とおなかを押さえて前かがみになった。
脳裏にマ・コトたち聖銀竜だけでなく、この手で抱いた、タマゴから孵った黒鋼竜の子どもたちの姿が浮かぶ。
伸ばされた手、可愛い鳴き声、小さな体のあたたかさ。
それが…その子どもが、冷たく暗い邪気の中に沈んで苦しみにのたうち、まだ言葉にならない悲鳴を上げる。
小さな手が、喜びにではなく痛みと苦しみから救いを求めて、私に向かって伸ばされる。
その手も真っ黒に染まっていて…。
「マ・リエ!」
「姫様!」
左右から声をかけられて、私ははっと我にかえった。
「…あ…」
「大丈夫ですか?姫様…」
「わかるわ、私もダグたちから話を聞いたとき、そうなったもの」
左右から伸びたタニアとサラの手が、背中を撫でてくれる。
そのあたたかさにほっとして、私はようやく顔を上げた。
ルイとダグは厳しい顔をしていたが、ルイは私と視線が合うと、また話し始めた。
「ひどい扱いを受けて、苦しんでいるんだ。その子を、助けてやって欲しいんだ」(続く)
第207話までお読みいただき、ありがとうございます。
邪気にまみれた竜の子を、助けてやりたいと頼まれたマ・リエは…。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




