第203話。タニアに邪気竜エレサーレと彼が抱え込んでいた魂、そしてエレサーレによって邪気にまみれていた国を浄化したことを、サラ、ルイ、ダグにバラされそうになったマ・リエは…。
第203話です。
「私も姫様のことについて、皆さんにお話したいことがあるんですけど…」
ぎくり。
こわごわとタニアを見ると、彼女は獣のような瞳をキラリと輝かせて、私を映した。
えっ、エレサーレのところに行った話をするの?
しちゃうの?
私、怒られちゃうんじゃないの?
もう過ぎたことだから、このまま言わなくてもいいんじゃない、タニア?
けれどタニアの瞳は、絶対に皆に言いますからね、と言っていて、私はあきらめてうなだれるしかなかった。
そんな私の心の葛藤などお構いなく、お茶を飲んで一息ついたダグが、再び口を開いた。
「ところで、オレたちが留守にしている間、マ・リエはここでおとなしくしていたんだろうな?」
ぎくり。
「え…ええと…」
ルイが翠色の瞳をカッと見開いて、私を見る。
「まさか、何かしたんじゃないよな?」
サラはにっこり笑ったが、目が笑っていなかった。
「ええ、私たちがいない間に何かするなんてないわよね?」
「えっと…その…」
私が言い淀んでいると、横に座ったタニアが声を張り上げた。
「そのことで皆に話があるの!」
私はあわてて彼女を止めようとした。
「たっタニア、あれはね…仕方がないことで…」
「あれってなに?」
「マ・リエ!」
「何かしたんだな?」
あ、あわわわわわわわ。
「いっいえ何かをしたってことじゃなくてね、あれはほんとに声がしたから気になって行っただけであって、あんなことになるとは思っていなくって、でもたいしたことはしていなくって、それで」
「あんなことって?」
サラが声を上げる。それにかぶせるように、タニアが拳を握った。
「姫様、たいしたことではないですって?姫様は戻って来られてから、二日間目を覚まされなかったんですよ?それでたいしたことはないなどと、よく申されます!」
「えっ二日間も?それどういうことなの、タニア?」
「説明してくれ、マ・リエ!」
目の色を変えたサラとルイに迫られ、その背後からはダグの無言の圧力にも押されて、ソファの背もたれに押しつけられた私は、自分を守るように柔らかなクッションを盾のように目の前に掲げ、その端っこから三人を見た。
「あ、あのね。ちゃんと説明するから…その…椅子に戻って、ね?」
ルイとサラの剣幕に、タニアも間に入ってくれた。
「そうね、このままでは姫様がお話できないわ。私からも説明するから」
すると二人はダグが無言で座るソファに戻ってくれて、私はおずおずとクッションから顔を出した。(続く)
第203話までお読みいただき、ありがとうございます。
鞠絵はルイたちにきちんと説明できるのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけたら嬉しいです。




