第202話。なぜ竜の領地に帝国の第三皇子ガイウスと元大将軍ヴィレドを連れ帰ってきたのかをマ・リエに話すルイたち。また闇竜と呼ばれ始めている漆黒の竜は、邪気を吸い取るというが…。
第202話です。
「やっぱりマ・リエは心配するだろうなって思ってたわ」
サラが苦笑し、ダグが話を続けた。
「どうして彼らを連れてきたかっていうと、彼らは神金竜ヴァレリア様の居場所を知っているようなんだ」
「えっ、そうなの?」
やっぱり、皇子様と大将軍のクラスになると、その情報を知っているのね。
ヴァレリア様については、機密中の機密であるはずだもの。
知っている人がいて、その人たちを助けるという恩を売れたことは僥倖だったけれど、それならどうしてヴァレリア様の居場所はわからなかったなんてダグは言ったの?
「二人のうち、特に元大将軍ヴィレドは、ヴァレリア様の場所を知っていると言ったんだが」
「元、ってなに?今は違うの?」
「ああ。水竜の砦での失敗をもって、ヴィレドは大将軍の地位をはく奪されたらしい」
「ああ…そうだったのね」
それについては、かわいそうだなんて思わない。
あの時私は自分にできることをしたし、追い払われた彼らが相当の処分を受けたのは、当然のことだと思うもの。
「それで?ヴィレドさんはヴァレリア様の居場所をまだ教えてくれないのね?」
「そうなんだ。ガイウスを連れて竜の国に行って、ガイウスの身の安全を確保したい、ヴァレリア様の情報と引き換えにしたいと言っていてね」
ダグに続いて、ルイも言葉をつづけた。
「今、おばば様のところに行っているから、その話もしているんじゃないかと思う」
ヴィレドさんって人は、ガイウスさんにずいぶんと入れ込んでいるのね。自分よりもガイウスさんの身の安全を確保したいと望むなんて、とても忠誠心が高いのね。
「マ・リエのところに来る前におばば様とも会って挨拶してきたけれど、おばば様が言うには、明日の夜には七頭の真竜の長たちが集まってきて、会議を開くらしい。そのときにヴィレドが話をすると思うよ」
そうなのね。それじゃ、ヴァレリア様の居場所は明日わかるかもしれないのね。
「それから、もう帝都とかでは吟遊詩人たちが歌にし始めているけど、六枚羽の真っ黒な竜が存在しているらしいんだ。吟遊詩人たちは、闇竜様…と呼んでいる」
「闇竜様?」
どういうことかしら。六枚羽の真っ黒な竜なんて、聞いたこともないわ。
「どうも邪気を吸い取るらしいんだ。ほころびを閉じて、その場に満ちた邪気を吸い取ってくれるって」
えっ…邪気を、吸い取る?それって…。
「ほころびを閉じるといっても、神金竜がするように長い期間閉じられるのかはわかっていないんだけどね。大きさは最初、手のひらに乗るくらいと言われていたけれど、帝都で吟遊詩人から聞いた話ではもっと大きくなってる」
ルイの話に、続けたサラは首を傾げた。
「邪気を吸い取って、成長してるのかしらね」
それって…まさか。
私の脳裏にエレサーレがよぎったが、手のひらサイズの六枚羽、というところでその可能性は消えた。
「皆さん、お話もいいけどお茶を淹れましたよ」
タニアがお茶を持ってきてくれたので、私たちは部屋の中の机を囲んで、タニアが置いてくれた椅子に座った。(続く)
第202話までお読みいただき、ありがとうございます。
闇竜とはどんな存在なのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。
次回は都合により、一回お休みとなります。




