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第196話。ぴやぴや鳴く聖銀竜の赤子マ・コトに、ミルクを作ってもらうマ・リエ。ユニコーンとの混じりもの、美少女キアの母親ミシャが、ルイの母親シルと食事を作ってくれるという。

第196話です。

 ケリーはザインやルードと共に、外の見張りなどの仕事に就いてくれているらしい。

 お尻にオムツのついた黒鋼竜の子を抱きしめながら、キアが嬉しそうに言った。

「今夜はオムレツと、天ぷらだっておかあさんが言ってたよ。村でマ・リエおねえちゃんが作ってくれたものね。あれから何度もおかあさんが作ってくれたの!おいしいよね!」

 キアの母親のミシャと、サラの母親のシルには、ユニコーンの村では本当にお世話になった。私にできることは多少の、こちらでは変わっているだろう料理を教えてあげることくらいだったのだが、あれからも作っていてくれたなんて嬉しい。

 天ぷらではミシャがひどいやけどをしてしまって、一度は作れないと言ってたくらいだったけど、そのトラウマを乗り越えて、そのあと作ってくれてたのよね。

 今も作っているってことは、本当にもう大丈夫なのね。良かった。

 ミシャとシルのごはんはとても美味しいから、今夜も楽しみだわ。

「あ、マ・リエおねえちゃん、ほら。マ・コトが鳴いてるよ」

 キアの言葉に、私は我に返って腕の中を覗き込んだ。

「よしよし、きっとおなかがすいたのね。じゃあミルクを飲みましょうね」

 私はそう言いながら立ち上がり、マ・コトを抱いて保育室の中にある授乳コーナーに移動した。そこには部屋の中を一定の温度に暖めるストーブがあり、その上に置かれた底広のタライの中には、お湯が張られてぐつぐつと音をたてている。

 このお湯は室内の湿度を保つ他に、もう一つの役割があった。

「お願いします」

 そこにいた真竜の女性に私が声をかけると、彼女は微笑んで頷いて、そのタライで一度煮沸したあと七十度くらいに冷ましたお湯を、哺乳瓶の半分くらいに入れた。そして粉ミルクを入れて、湯冷ましのお湯を哺乳瓶の上のほうまで注ぎ、よく振って混ぜる。

 そのミルクが適温に冷めるまで、私は体を左右に揺らしてマ・コトをあやしていた。

 真竜の女性がミルクを作ってくれたのは、マ・コトのためだけではなかった。黒鋼竜の赤ん坊を抱いた何人もの女性たちやキアのため、何本も同時に作っていたのだ。

 この黒鋼竜の領地では、四頭の聖銀竜の子と、それ以上の数の黒鋼竜の子たちが一斉にタマゴから孵って、大騒ぎになった。

 こんなに一度に面倒は見られない、とまず真竜の里から助っ人を呼ぼうとしたのだけれど、どこの里でもベビーラッシュが起こっていて、とてもこちらに人員を割ける余裕はなかった。

 だから、ユニコーンの村にも声をかけることになったのだけれど。

 そのため、男女問わずに時間のある者は保育室にやって来て、子どもたちの面倒をみている。

「どうぞ、聖銀様」

「ありがとうございます」

 程よい温度に冷めたミルクを受け取って、私はマ・コトを左胸に抱き直した。

「ぴゃ」

「はい、ミルクよマ・コト。おいしいでちゅよ~」

 つい赤ちゃん言葉になってしまって赤面したけれど、真竜の女性たちもキアも、微笑んで私を見つめただけにしてくれた。(続く)

第196話までお読みいただき、ありがとうございます。

天ぷら食べたいですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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