第195話。産まれたばかりの竜の子たちを世話するために、かつてマ・リエが世話になったユニコーンの村からも応援が駆けつけてくれた。村で知り合った美少女キアになつかれて…?
第195話です。
もう一つ不思議なことは、今まで黒鋼竜と真竜との間に産まれた子どもは、そのほぼ全てが真竜であったはずなのに、今回産まれた子どもたちは、全員黒鋼竜だったこと。
それはきっと、私の中のナギが呼びかけたことが影響しているのじゃないかと思う。
どこかに聖銀竜の子どもたちも、まだいることを信じて、私はマ・コトたちの世話をしていた。
子どもたちと一緒にいることはとても楽しくて、その面倒をみている時間は幸せで、私はつい自分の役目も忘れ、この黒鋼竜の領地で聖銀竜や黒鋼竜の子どもたちと過ごしていた。
産まれたばかりの子どもたちは、輝くような未来に満ちていて、生命力にあふれていて、傍にいるだけで私にもそれが伝わってくる。
とても心地よくて、小さな手を伸ばしてくるのが愛しくて、そのあたたかさが優しくて、ずっとこうしていたい、とすら思っているくらい。
すると保育室のドアが開いて、ユニコーンの村で知り合った混じりものの少女、キアが、細い腕に小さな竜の赤ん坊を抱えて入ってきた。
「マ・リエおねえちゃん!」
部屋の中に私がいるのを見つけると、嬉しそうに顔をほころばせて、たたたっ…と小走りに近くまでやってくる。
私がこの世界にやってきて、最初に出会ったユニコーンの混じりものの少女。初めて会ったときにはヒト型になれなくて、私が歌を歌ってヒト型になれた彼女は、金髪とほんのりと小麦色がかった肌、真っ青な瞳をしている。
久しぶりに会ったキアは少しだけ背が伸びていたけれど、相変わらず美少女だ。
私はほっこりして、彼女に笑いかけた。
ベビーラッシュに人手が足りず、ユニコーンの村にも使いを出して、何人かお手伝いを頼んだ。
聖銀竜に仕えるというユニコーンたちは、その子どもの世話ができると聞いて、我も我もと手を挙げてくれた。
結局十人ほどがこの黒鋼竜の領地にやってきてくれたのだが、その中には見知った顔が六人ほどいた。
まだ少女だが子どもの世話をしたいと申し出たキアと、その兄ケリー。そして彼女たちの両親であるミシャとザイン。
それからルイの父親であるルードと、サラの母親のシルだ。
その六人と、顔見知りではないけれど残りの四人もみんな、本当にありがとう。とても助かるわ。
キアはここに来て私に会うやいなや、飛びついてきて抱きしめてきて、なかなか離してくれなかった。
久しぶりだものね。私も会えて本当に嬉しくて、ぎゅうぎゅうキアを抱きしめた。
おねえちゃん、と呼ばれると、胸の奥があたたかくなる。
ユニコーンの村では一生懸命歩く練習をしていたけれど、走れるようにまでなったのね。よくがんばったのね。
キアは私と一緒に聖銀竜の子の面倒をみたり、それ以外では今のように黒鋼竜の子を世話してくれている。
「私、この子のお姉ちゃんなの」
ケリーという兄しかいない彼女には、年下の子どもはとても嬉しいのだろう。世話をする竜の子にそう言っては、かいがいしく面倒をみた。
その気持ちはとてもよくわかる。だって私も、キアたちにそんな思いを抱いていたから。(続く)
第195話までお読みいただき、ありがとうございます。
赤ちゃんの面倒は大変ですよね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




