第193話。地下にいたのは真っ黒に汚染された竜だった。その竜を助けてやることはできないのかと、一行は考えるが…。
第193話です。
「…ッ…!」
この子竜には、タマゴから孵って親から愛情とともにつけられるはずの、名前すらない。
親の愛の代わりに、ひどい苦痛を生まれ落ちた瞬間から与えられ、美味しい食事も動き回る自由も奪われ、ただ苦しむことだけを許された。
口輪をされていても、ンーン、ンーン…とすすり泣きのような声が、薄暗い空間に響いていた。
「これが…城の地下にいる竜だ。神金竜ではなかっただろう?この竜で、邪気を使った隷属紋を試せていたため、水竜にも隷属紋を打つことができたのだ」
ルイのように涙こそ零してはいないが、荒い呼吸をしながらダグがヴィレドを振り返った。
「何のために…この竜を閉じ込めているんだ?」
彼らに対し、ヴィレドは首を振った。
「それは私は知らない。皇帝陛下には何か策がおありなのだろうが…ここには私と皇帝陛下しか、来たことはないはず。二人で、時には陛下お一人でこの竜を見るためやって来ていたが…陛下がどんなおつもりでいるのか、私にはわからない。すまない」
「助けてやることは…」
できない、ということは、四人全員がわかっていた。
でも。
ルイは手すりを握り締めた。
「マ・リエなら…マ・リエなら、あの子を助けてやれるんじゃないか?彼女をここに連れてくれば…」
「ルイ、無茶を言うな。そんなことをすれば、その後どうなることか…」
「でも…!」
ダグとルイの背後から、ラバンが静かに声をかけた。
「今はどうしてやることもできません。私たちは確かに、邪気に沈められた炎竜の子をこの目で見ました。はるか下にあるとはいえ、邪気の上に長くいるのは危険です。もうここを出ましょう」
「……」
「ルイ」
「…ああ…そう…だな。どうしてやることもできない…今は」
ルイはぐい、と涙を腕でぬぐって、ヴィレドに促されるまま皆と共にバルコニーから地下通路へと戻った。
「戻ろう」
「いつか…あの子を助けてやりたい。いつか…」
何度も振り返りながら、ルイは地下通路を地上へ向かって歩いていった。
そしてその数日後、ヴィレドとガイウスを含めた一行は、エダルの街を立って竜の領地へと向かったのだった。(続く)
第193話までお読みいただき、ありがとうございます。
いつか、地下の竜を助けてやれる時は来るのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




