第189話。城の地下にいるという竜を見て確認しておきたいというカルロスに、ダグ、ルイ、ラバンが同意する。彼らを監視の目もあるだろう城の地下まで、連れていくと言い出したのは…。
第189話です。
カルロスはヴィレドをじっと見つめて、静かな声で問うた。
「少なくとも、城の地下にいる竜はヴァレリア様ではない…というのは本当なのだな?」
「ああ」
だが、とカルロスは続けた。部屋の中は話している者以外誰も無駄な声を発せず、しんとした中、カルロスの声が響いた。
「念のため、その竜を見ておきたい。城の地下に幽閉されるほどの竜とはどんなものか…この目で見て報告しなければ。しかし私はヴィレド殿から、帝都には近づかないように警告されているし…」
「オレたちが行こう」
ルイが手を挙げる。ダグやサラ、ラバンも頷いた。
「オレたちが、この目でどんな竜なのか見てくる」
「それは有り難いが…城の地下までどうやって行けばよいものか。兵もいるし、罠もあるだろう。扉も閉ざされていることだろうし」
「私が行きましょう」
意外なことに、声を上げたのはヴィレドだった。彼以外の全員の視線が集まる中、ヴィレドは続ける。
「城の地下まで行くルートは、私が知っている。兵に見つからず、罠も迂回できるのは、この中では私だけだ」
「オレ様も実際行ったことはないからな」
ガイウスの言葉に頷き、ヴィレドはルイを見つめた。
「あなたとダグ殿、それに魔法師のラバン殿の三人くらいなら案内できる。どうするね、行くかね?」
するとサラが心配そうに手を胸に当てて、ヴィレドに向かって言った。
「あなたは危険ではないの?出てきた帝都にまた戻るなんて」
「なに、魔法師のラバン殿に、目くらましをかけてもらうさ。帝都に一緒に向かったダグ殿とサラ殿も、何かしらかけてもらっていたのでは?」
ヴィレドとガイウス以外の全員がぎくりとしたが、彼らにユニコーンが混じっているということまでは知られていないだろうと、口を閉ざすことにした。
「私の目くらましだけでは足りないでしょう。顔を知られているヴィレド殿は、布で顔を隠してもらう必要があるかと」
ラバンの言葉にヴィレドはもちろん、と頷いた。
「私も行くわ」
サラがそう言うのに、ヴィレドは首を横に振って言った。
「いや、あなたはここに残って、私の代わりにガイウス殿とシダー殿の面倒を見ていただきたい。女性だから頼めないこともあるだろうけれど。カルロス殿は引き続き、情報収集で部屋をあけることが多いだろうし」
「…そうね、皆いなくなってしまっては困るわね。わかったわ。残念だけれど、私は残る」
サラが頷いてくれたことに安堵したように、ヴィレドは微笑んで彼女に向かって胸に手を当てて軽くお辞儀をした。
「ありがとう。ではルイ殿、ダグ殿、ラバン殿。明日は休んで、明後日に出立ではどうだろうか」
「助かる。ではそうしよう」
カルロスはヴィレドの言葉を完全に信用したわけではなかったが、ガイウスがこちらの手の内にある以上は、ヴィレドが裏切ることはないだろうと考え、帝国の城の地下の竜についてはヴィレドに託すことにした。(続く)
第189話までお読みいただき、ありがとうございます。
城の地下にいる竜とは、どんな竜なのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




