第187話。各自持ち寄った情報のすりあわせをするカルロスたち一行。小さな黒い竜はどちらの街でも聞いた話だったが、黒い竜がほころびに施したことと、その方法とは…。
第187話です。
カルロスが手を挙げる。
「それでは、情報のすり合わせをしよう。私たちは…」
カルロスが冒険者たちから聞いた、黒くて小さな竜の話をすると、ダグも頷いた。
一応帝国の皇子であるガイウスに対するとき以外は、夕食のときから皆の口調から敬語は消えていた。
「帝都でもその竜の話は聞いた…が、大きさが違うな」
「なんと、帝都でも?でも大きさが違う、とは?」
サラがそうね、と、聞いた話を思い出すように天井を見上げた。
「私たちが聞いた話では、開きかけたほころびに向かっていった真っ黒い竜がいたというのだけれど、その竜は大きな鳥くらいの大きさだったそうよ。だから見た者は子どもの亜竜かと思ったみたい。でも翼が六枚見えたから、どの亜竜でもないって首を傾げていたの」
カルロスは目をまるくした。
「我々が入手した話では、小さい鳥くらいだったというのだが…見間違いではないのか?」
「何人かがあちこちで見たと、その竜の話をしていたのだけれど、大きさは大きめの鳥だとか、子竜くらいだとか…少なくとも、小鳥くらいではなかったわね」
サラの言葉に、カルロスはうーむ、と腕を組んだ。
「別の個体なんだろうか…」
「あ、そういえば」
ダグも言葉を挟む。
「その竜が去っていったあと、ほころびは白く輝く糸のような魔力で閉じられていたそうだ。それはカルロス殿たちがこの街で聞いた話と一致するな」
「えっ、白い糸のような魔力で?そんな竜が何頭もいるのか?」
黙って皆の話を聞いていたガイウスが、おもむろに声を上げた。
「成長している、という考えはどうだ」
「えっ」
「同一個体が…エダルで聞いた竜が、帝都で聞いた大きさまで成長しているのではないか?と、オレ様は言っているのだ」
確かに、それは有り得る話かもしれない。
しかし二つの街で聞いた話をよくすり合わせてみると、何体かの竜の目撃談は、二週間ほどしか間があいていなかった。
カルロスはそんなはずはない、と思いながらも、本来ならば神金竜が閉じ、聖銀竜が封印するはずのほころびをただ一頭で閉じるという、しかも大きさ以外は全く同じ特徴をもつ竜が何頭もいるとは信じがたい…とも考えていた。
それは他の皆も同じだったらしい。(続く)
第187話までお読みいただき、ありがとうございます。
小さな黒い竜は同じ個体なのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




