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第186話。アトラス帝国元大将軍ヴィレドが、元婚約者に誓っていたこととは。帝国の帝都に行っていたダグたちが戻ってくる頃には、だいぶ復調してきた第三皇子ガイウスも話せるように。

第186話です。

「陛下の操り人形としてうつろな一生を送るのだろうと思っていたよ。あの方を産んで、彼女が亡くなるまでは…自分でも、こんな気持ちになるとは思わなかった」

「こんな気持ち?」

「ああ。何もかも、生きる目的も気力すらなくした私に、彼女はあの方を守るという目的を与えてくれたんだ。彼女の血を引く、たった一人の方を守るという、ね…」

 ルイは静かに問うた。

「あんたの主はそれを許してくれたのか?」

「多分、私を縛る新しい鎖になると思ったのだろうな。剣を教えたいと言ったら、簡単にお許しになった。それどころか、教育係にすら任命してくださった」

「あんたは新しい女性と家族を持つことだって、できただろうに…」

 ヴィレドはフッと笑って、また手の中のお茶に視線を戻した。

「彼女と婚約を決めたとき、私は生涯、彼女ただ一人だと誓ったんだ。三重の隷属紋があったとしても、守ることも、抗議することすら出来なかった情けない男だが、せめてその誓いくらい守らなければ、本当のクズになってしまうだろう?私にだって、それくらいの意地はあったのだよ」

「そうか…少し、気持ちはわかる気がするよ」

「…ありがとう、ルイ」

 ヴィレドはそっと瞳を閉じた。

 その話は、ルイの心を重く打った。

 意識して冷静になろうとは思ったが、ルイのヴィレドに対する警戒は一段階下がった。

 彼はガイウスに何かあると思えば、こちらの言うことを簡単に聞くだろうと思えたからだ。




 そして、その十日後のこと。

 情報を仕入れにアトラス帝国の帝都に行っていたダグ、サラ、ラバンが戻ってきた。

 エダルの街から帝都までは馬車で二日ほどかかるので、帝都で一週間ほど過ごしていたことになる。

 その間に彼らは酒場や飲食街、街のあちこちを巡り、冒険者や街の人たちから話を聞いてまわった。あまり聞きまわっていると怪しまれはしないかと、適切な頻度を守ったつもりだ。

 帰ってきて宿の部屋を取り直し、皆で夕食を摂った後に、ガイウスの部屋に集まった。

 ガイウスはだいぶ回復してきて、今ではシダーに付き添ってもらってリハビリにいそしんでいる。もともと素直な性格であったのか、傍若無人な皇子の部分は鳴りを潜め、シダーの言うことをよく聞いて頑張っているようだ。

「ガイウス殿も見違えるように回復したのですね。良かったです」

 ダグがそう微笑むと、ガイウスは少し照れたように笑顔になり、シダーとヴィレドを振り返った。

「うむ、これもヴィレドが私をかばってくれて、シダー殿が回復魔法をかけてくれたおかげだ。感謝している。シダー殿のリハビリは鬼だがな」

 その言葉にシダーはくすくすと笑って、首を振った。

「前のように動けるようになりたいとおっしゃったのはガイウス殿ではないですか。でも私のリハビリについてこれるガイウス殿も、とても頑張っておられますよ」

 ガイウスはリハビリを思い出したのか顔をしかめたが、シダーを振り返ってこう言った。

「まあ、おかげでだいぶ以前の状態に戻ってきている。もう宿を出てもいいのではないかと思っていたところだ。ヴィレドが動かないから、皆が戻るのを待っていた」(続く)

第186話までお読みいただき、ありがとうございます。

ガイウスもリハビリを頑張ったのですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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