第183話。カルロスは、伝説の魔道具師の話を思い出す。最初の魔道具師はどうやって生まれたのか。そして神から授かったと言われる『ギフト』とはどういうものか。
第183話です。
「姉ちゃんがシャーリーンで、弟がエリックっていうんだぜ?」
カルロスは首を傾げた。
「それって、伝説の魔道具師の兄妹の名前に似てないか?」
「だろだろ?それを言われるのがイヤだからって、リーンとリックって名乗ってるんだぜ」
それを聞いたカルロスは、微笑んで姉弟に頷いてみせた。
「そうだったのか。オレはカルロス。カルロス・ロッドだ。よろしくな、リーンにリック」
すると姉弟はあからさまにほっとしたような顔になって、眉をしかめて苦笑した。
「ありがとう、カルロス。私たち双子なもんだから、親が伝説の魔道具師にあやかって名前をつけちゃったのよ。ほんとに迷惑してるの」
「そうか…まあ、飲んでくれ。ここはオレのおごりだから」
「ありがと」
カルロスは、以前本で読んだことのある、伝説の道具師について思い出した。
二つの世界が融合したこの世界に放り出された人間たちは、魔力やそれまではなかった環境に何とか適応していった。
そのうちに、その体内にわずかではあるが魔力を宿す者が、ごくまれにだが産まれてくるようになった。
そして、その力を使う者たちが現れた。
魔法師や魔術師よりも先に生まれた職業が、魔道具師である。
魔道具師は魔法師や魔術師よりも、魔力も属性も必要とせず、ごくわずかな無属性の魔力さえあれば、能力を発揮することができたからだ。
創世の頃の人間たちには、属性と魔法回路をつなぐ詠唱の技術がまだなかった。とある天才的な魔法師が現れるまで、魔法や魔術は全く使えなかったのだ。
エリクとシャーリーの兄妹は、最初の魔道具師と伝えられている。
そして二人ともに、ギフトの持ち主であったとも。
ギフトとは、この世界で、神から授かったという能力のことだ。
それを持つ者の八割ほどは、全く意味がない『ジャンク』と呼ばれるものだったが、残り二割弱にはないよりマシという『コモン』、まあまあ役に立ち、あると助かるほどの『レア』、そして四%ほどが持つという、もし持っていれば一生困らない相当なものである『レジェンド』、持つ者は〇・一%以下という、良くも悪くも世界を変えうる力を持つ『アーティファクト』がある。
エリクはこのうちの『レジェンド』であり、『共感』のギフトを持っていた。妹のシャーリーは後に『天啓』と呼ばれる、アーティファクト級のギフト…世界を変えうる能力の持ち主であったのだ。
産まれつき足が不自由であったシャーリーは、常に家族の介護が必要で、主に兄のエリクが彼女の世話をしていた。エリクの『共感』はそのために生まれたと言われている。
シャーリーが十二歳になったある日、ひどい嵐の夜に吹き込んできた風雨で、ロウソクもランタンもランプも消え、近所では風のせいであおられた炎で火事まで起きた。
その数日後、シャーリーはボロ布に、奇妙な図形を描いたものを兄に見せた。エリクはそれが何かの回路であると『共感』によって気づき、妹とともに古いランタンを改造した。
それこそは、火を使わず油やロウも必要としない、しかもそれまでの何倍もの明るさを持つ魔導ランタンだった。
それが最初の魔道具であるとされている。
エリクは何度も妹と話し合いながら、魔導ランタンをよりよいものへと改造していった。明るさも持続時間も伸びていき、多くの人々が火事の心配も消える不安もない魔導ランタンを求めてくるようになり、兄妹はそれで生活していけるようになった。
魔道具師の誕生である。
シャーリーはその後も次々と、彼女のもつ『天啓』のギフトによって、誰も考えなかったような魔道具の設計をし、エリクがそれを実用化していった。
そしてついに、邪気や瘴気に苦しんでいた当時の生命の全てが最も必要としていたもの…邪気や瘴気から内側のものを守る、結界装置が生まれたのだ。
それは死ぬはずだった多くの生命を救い、文字通り世界を変えたのであった。
現在ある魔道具の半分ほどは、原点がこの二人だと言われている。
そして、どんなに請われても彼らは決して、武器を作ることだけはしなかったということも、カルロスは思い出した。(続く)
第183話までお読みいただき、ありがとうございます。
エリクとシャーリーはすごい魔道具師だったのですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




