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第180話。アトラス帝国の元大将軍であったヴィレドが、皇帝ディガリアスの命令に絶対に逆らえなかった理由とは。どうしても帝国の情報が欲しいというカルロスに、ユニコーンのダグの提案は…。

第180話です。

「優しいお嬢さん。私は皇帝陛下の御言葉には、逆らえなかったのです。このせいで…失礼」

 ヴィレドは自らの胸元の服のボタンに手をかけて、そのまま左右に引き開けた。

 そこに、あったものは。

「隷属紋…!?しかも、三重の?」

 ヴィレドの胸を見たラバンが驚きの声を上げる。

 ヴィレドの胸には三重にかけられた隷属紋があった。

 どれだけ彼が逆らうことを恐れたというのだろう。

「皇帝陛下は誰も信じません。傍にはべる者は全て、陛下に害をなさぬように隷属紋を打たれます。侍女、侍従から側近、側妃に至るまで、すべて。それ以外の者とは、陛下は決して二人きりにはなられません」

 それにしても、三重とは。

 しかしその紋章は、ズタズタになりあちこちが欠けて、もはや機能してはいなかった。

「聖銀の姫が水竜を救ったときに、私も傍にいたのです。そのためにこの隷属紋も壊れました。私は自由を取り戻したのです。皇帝陛下は気づいておられませんが、私はそれを利用しました」

 ラバンが息を少し荒げて、まだ驚きを隠せずに言った。

「しかし三重の隷属紋など…普通なら気が狂います。よく持ちこたえられましたね…それに壊れたとはいえ、それはあなたと皇帝陛下をまだつなげています。だからこそ、気づかれなかったのでしょうね。そのつながりがあったからこそ、皇帝陛下はあなたを外に出したのでしょう。命令すれば戻ってくる、と思っているからこそ」

「はい、そうだと思います」

 ヴィレドはそれらの全てを、ガイウスを帝国の外に出すために利用したのだ。

 カルロスはヴィレドの話を聞いて、大きく溜め息を吐いた。

「そうだったのですね…ヴィレド殿が、皇帝陛下について疑問に思っていることも、だからこそガイウス殿や私を陛下に近づかせたくない、ということもわかりました。しかし私はどうしても帝国の情報が欲しい。どうしたものか…」

 するとそれまで黙ってヴィレドの話を聞いていたダグが、険しい顔をしながらも口を開いた。

「それでは帝国にはオレとサラ、ラバンで行ってこよう。帝国に住むラバンを頼って田舎からやって来た夫婦が、帝国のことを色々知りたいからという名目で情報収集すればいい」

 それを聞いたサラが、ぱっと両手を頬に当てた。

「ふ、夫婦だなんて…」

「いやか、サラ?」

 真面目な顔でダグに聞かれて、サラはブンブンと頬に両手を当てたまま顔を左右に打ち振った。

「そそそんなこと。イヤだなんて絶対ないから!うん!」

「それなら良かった」

 ダグは微笑み、その表情を見たサラは余計に赤面した。

「カルロスはこの街に残ったほうが良さそうだ。冒険者を装って、このエダルの街で情報を集めてくれ」

「わかった、そうしよう」

「オレは?」

 ルイが身を乗り出す。ダグは彼を振り返って、ヴィレドに気づかれないように軽く目くばせをした。(続く)

第180話までお読みいただき、ありがとうございます。

ダグはルイにどうしろというのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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