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第170話。アトラス帝国の皇子ガイウスのケガを、魔法師のシダーが治癒魔法を使って癒そうとする。すぐに回復させるのは難しいというシダーに、移動を提案するカルロスだが…。

第170話です。

「カルロス殿、それより治療を先にしなければ…!彼の傷は相当深いですよ」

 そう言われて改めて見れば、ガイウスの腹は当てている手の指の隙間からもたらたらと血がこぼれ落ちてきていて、着ている服も腹から下は血まみれとなっていた。

 ガイウスの顔は蒼白であり、額には脂汗がにじんでいて、呼吸は浅く速い。

 カルロスは金色の眉を潜めた。

「…そうですね。とりあえずは、治療をしなくては」

「動かせそうにないから、シダーを連れていきますね」

 馬車からサラがそう声をかけて馬車の後ろへまわり、詠唱に集中しているシダーの手を引いて、ガイウスのところまで連れていった。

 深い傷に対応するためには、それなりに集中した長い詠唱が必要となるのだ。

「手をどかしてください」

 そう言うサラに、ヴィレドが首を振る。

「しかし、それでは出血が押さえられません」

「すぐに魔法で塞げば大丈夫です。さあ」

「…わかりました。ガイウス様、手を」

「…ああ…」

 意識がもうろうとしているのだろう、ガイウスはヴィレドの言葉にやっと反応して、腹に当てた血まみれの左手を外した。

 途端に出血がひどくなる傷口に向かい、シダーの回復魔法が降り注ぐ。

「恵みの大地よ、激しき炎よ、清らかなる水よ。奔放なる風よ、自由なる雷よ、冷徹なる氷よ。光の導きと闇の豊かさに従い、我が魔力を使いて、この者の傷を癒したまえ」

 傷口にかざしたシダーの両手から、七色の虹のような光が放たれて、ガイウスの腹の傷口に降り注いでいった。光は傷口を塞ぎ、浅い呼吸を繰り返していたガイウスはしばらくして、一つ大きな溜め息をつく。

「ガイウス様!」

 ヴィレドが覗き込むと、ガイウスはぐったりと意識をなくしてはいたが、先程よりは呼吸が安定しているようだった。

 シダーが顔を上げて皆に言う。

「…傷が深すぎます。私の治癒魔法では、今は傷を塞いで出血をとめているのがやっとです。完全に治癒するには、もっと時間をかけなければ…」

「もっと、ってどれくらい?」

「一週間、というところでしょうか」

 ダグが周囲を見渡して首を振った。

「それじゃあ、ここにいるわけにはいかないな」

 するとカルロスが、立ち上がりながら指をさした。

「ここから東のほうへ少し進むと、只人たちの街があります。そこで休ませてもらうことにしましょう」

 ルイも頷いた。

「そうだな、我々も急いではいるが、こんなけが人を放っておくわけにもいかない。その街でシダーと一緒に、拠点を作ることにしよう」

 シダーが顔を上げてヴィレドを見る。

「その前にヴィレド殿、あなたの傷も癒しましょう。あなたは軽いケガのようだから、すぐに治せると思います」(続く)

第170話までお読みいただき、ありがとうございます。

ヴィレドの傷も癒せるのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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