第169話。一行が見つけたのは、賊に襲われているアトラス帝国軍の皇子と将軍だった。魔法と剣で賊に対抗する一行だったが…。
第169話です。
しばらく走るとユニコーン以外にも金属音が聞こえるようになり、いきなり開けた場所に出た。
そこにいたのは、馬から落とされたのか地面に立ち必死に剣をふるっている二人の男性と、彼らを囲んで馬の上から剣を振り下ろしている、鎧を着た数人の剣士だった。
一見するだけで、地面にいる二人組のほうが不利なのは明らかだったが、その二人を見たルイが声を上げる。
「あれは…アトラス帝国軍の皇子と将軍じゃないか…!?」
水竜の砦で、マ・リエの声によって平伏させられた後、国に強制的に帰らされたときの、悔しそうな顔がルイの頭をよぎる。
彼らの顔を見たのはあの時だけだったし、金ピカの鎧は着ていなかったが、ルイは自分の記憶力には自信があった。
それなら、馬に乗って彼らを囲む者たちは、強盗か殺し屋か。
彼らはひどく傷ついていて、特に皇子と思われるほうが傷がひどいようだった。
カルロスが叫ぶ。
「馬に乗った者たちを撃て!」
魔法師たちが、詠唱を終了させると同時に氷と土魔法を馬に乗った者たちに向かって発動させた。
「アイスニードル!」
「ロックレイン!」
鋭く冷たい氷のトゲと、小さな岩の塊が多量に現れて、馬上の者たちを一斉に襲った。
「ヒヒーン!」
「うわ…っ!」
「な、なんだ!?」
馬たちは驚いて暴れ、氷と岩の塊を打ち込まれた者たちは傷を負って落馬する者もいた。
そこへルイとダグ、カルロスが剣を抜きながら走り込んできて、魔法で傷を負った者たちと打ち合いになる。
キィン、キィンと幾度かの打ち合いの音が響いたが、傷を負っていることもあって、皇子たちを襲っていた者たちは次々と切り臥せられて落馬していった。
こんなに混戦になってはもう集団魔法は打ち込めない。魔法師のうち、回復魔法の使えるシダーは、傷ついた皇子たちを癒すための詠唱を始めた。彼の使える回復魔法はさほど強力なものではないが、命を繋ぎ止めることくらいはできるだろう。
「これで、最後だ…!」
ルイが剣をふるい、賊の最後の一人を打倒した。ドサリ、と音をたてて地に倒れた賊たちは、すでに誰ひとりピクリとも動かなかった。
「よし、これで全員倒したな。…大丈夫ですか?」
周囲を見回して確認したカルロスが、剣を鞘に収めながら馬から降りて、地面にうずくまっていた二人の傍に駆け寄った。
「すまない…助かった」
「お久しぶりです、ヴィレド・オースティン将軍。ガイウス皇子も」
カルロスの言葉に、ケガが軽い年上のほう…元大将軍ヴィレド・オースティンは、微妙な顔をして答えた。
「いや…私はもう将軍職ではありません」
「えっ?そうだったのですか?皆さん、彼はヴィレド、そしてケガのひどい彼はアトラス帝国第三皇子、ガイウス様です」
「ええっ?何故、お二人だけでこんなところに?」
「それは…護衛が全員、寝返りまして…」
そう答えるヴィレドに、驚いて詰め寄ろうとするカルロスに向かい、ルイが声をかける。(続く)
第169話までお読みいただき、ありがとうございます。
二人を助けられて良かったですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




