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第166話。鞠絵が発した光のことを話す皇帝とヴィレド。二人の目の前で、姿を変えるものがある。それについて皇帝は…。

第166話です。

「昨日未明の光を見たか?黒竜山脈の向こうで光ったようだが」

「はい。城の多くの者が見たようです」

「あれをどう見る、ヴィレド?あの娘が関わっていると思うか?」

 皇帝の問いに、ヴィレドは言葉を選びつつ答えた。

「であれば、すさまじい力です。黒竜山脈の向こうなれば、八千年前にほろんだかの国のあった場所。邪気に穢れた地を浄化でもしたというのでしょうか」

 ふむ、と皇帝は顎を撫でた。

「かの国は歴史書で見ても巨大な土地だ。そんな一国の浄化を、聖銀竜一頭でか?あり得んだろう」

 ククク、と笑う皇帝を見て、ヴィレドはおそらくはそうなのだろうと信じている己に驚いていた。水竜の地で彼女の力を直接見た彼にとって、ただ彼女の本来の力が発露しただけではないか、と考えることはもはや自然なことだった。

 アトラス帝国は只人…つまり人間最優先の国である。動物はもちろんのこと、混じりものもとても低く見られていて、奴隷が多い。

 奴隷でない混じりものは許可証がなければ国内にいられないほどだ。

 そんな国のトップである皇帝が、混じりものであるマ・リエの力を無意識のうちに低く見ていることは明確だった。

 ヴィレドは内心で、皇帝に気づかれぬようそっとため息をつく。

 そんな中、二人の視線の先で、金色の竜の姿がぼやけた。

 竜の姿は揺らめいて、一人の女性の姿になる。古代ギリシャ風のドレス、キトンをまとったその者は、ピンクブロンドの長い髪をした、たいそう美しい女性であった。金のサークレットをはめたその額には、金色をしたウロコが見える。

 皇帝は口の端を上げて笑い、腕を組んで顎を上げた。

「この竜の力をずいぶんと吸い取ってきたから、竜の姿を保てなくなってきているようだな。神金竜ですら、力を奪われればこうなる。それより弱い聖銀竜など、とるに足らんわ」

 ヴィレドは頭を下げる。

「陛下のおっしゃる通りでございます」

 皇帝には逆らえない。言葉には気を付けなければならない。

「しかし、ヒト型だと大変美しい女性ですな」

 皇帝は馬鹿にしたようにふふん、と嘲笑った。

「これは裏切りの女王だ。ヴァレリア・ヴィ・アトラス、竜の名はヴァレリア・ヴァレリー。この女のせいで古代アトラス王国は滅んだ。この女は国を捨て民を捨て、己が子まで捨てて竜になったのだ。強く美しく、長命な竜にな。ただ自分だけが、生き延びるためにだ」

 ヴィレドは頭を下げたまま、皇帝の言葉を聞いていた。

 ひとしきりののしって気が済んだのか、皇帝はヴィレドに向き直った。(続く)

第166話までお読みいただき、ありがとうございます。

帝国はヴァレリア女王の力を吸い取っていたのですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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