第163話。これからのことを話し合っておきたいというカルロスに、馬車を少し進んだところで止める一同。魔法師のシダーが、話し合いのための準備を始めて…。
第163話です。
「あっカルロスさん、何でもないんです」
「何でもないにしては、大きな声を出していたようでしたが…」
サラはあわてて両手を振りながら、顔を赤くした。
「ほ、ほら、馬車が珍しいから。ここのところ竜に乗って移動が多かったし、ユニコーンである私が馬車に乗るなんて面白くて」
「なるほど、そうだったのですね」
カルロスはそう納得し、馬車の中を馬上から覗き込んだ。少し奥にはシダーが座って、ユニコーンたちの会話には加わらず本を読んでいる。
「シダー殿。皆と一緒に、少し話があるのですが」
そうカルロスが声をかけると、シダーは本から顔を上げて頷き、馬車の最後方にいるサラの隣にやってきてくれた。
「なんでしょうか」
「これからのことですが…先程ラバンと話をしていたのです。あと三日ほど進めば、アトラス帝国との国境線に近づきます。さらにもう一日ほど進めば、アトラス帝国に到着するでしょう」
「意外と水竜の砦からは近いのですね」
驚いたダグがそう言うと、カルロスは彼を振り返って頷いた。
「そこで、そろそろ最後の作戦会議をしておいたほうがいいかと思うのです。帝国へ入るには商人を装えば問題ないでしょうが、そのあとどうするかということを細かく話し合いたいので、どこかに馬車を停めてお茶をしつつ話し合いませんか」
カルロスのその提言に、彼以外の四人は頷いた。
「そうですね。そうしましょう」
「では脇道に停められそうな場所があったら停めるように、ラバンに伝えてきます」
そう言うとカルロスは馬に号令をかけ、馬車の脇を通って御者台に向かった。ダグとルイはそのまま馬車の後ろで馬を進める。
まだ周囲に警戒する必要がないので、馬車の両脇につかなくてよいのだ。
「ルイ、ついにあと数日だな」
「そうだな。只人の国に入るのは初めてだ…緊張するよ」
「オレもだ」
サラもそれには同意した。シダーは己が隷属紋を打たれた帝国へ戻ることに、少なからず緊張しているようだった。
「シダーさんは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。皆さんのお役にたてるのなら。問題は、どのぐらい情報を多く集められるかということですね」
しばらく進むと、馬車が道の脇に寄って停まった。
ルイとダグも馬から降り、道の脇の木につないで馬車の近くに戻る。
同じように自分の馬をつないできたらしいカルロスと、馬車の馬をつないできたラバンもやってきた。
馬たちは、ユニコーンが近くにいるせいか落ち着いている。
「お茶を淹れますね」
シダーがそうやわらかく微笑んで、お茶を沸かすべく、馬車からケトルやポケットストーブ、カップなどを持って、すぐ近くの地面に用意を始めた。火を起こすのは時間がかかるので、お茶程度ならば固形燃料を使う。
魔法師ならば魔法で火を起こせばよさそうなものだが、ラバンもシダーも火魔法は使えないとのことだった。(続く)
第163話までお読みいただき、ありがとうございます。
これからのことを話し合っておくのは大切なことですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




