第159話。アトラス帝国の皇族カルロス・ロッドと、彼に救われた水竜レイアはどうもいい雰囲気のようだ。鞠絵に救われた水竜たちの話をカルロスにするレイアに、カルロスは…。
第159話です。
「カルロス様に私は助け出していただきました。隷属紋を打たれ、身動きのとれなかった私の鎖を解いて連れ出してくださったことを、どれだけ感謝したかしれません。飛竜に乗せてトリスラディ様のところまで助けを呼びに行けたのですし…ユニコーンの方々にもお世話になり…本当に、ありがとうございました」
カルロスは照れたように頬をかいた。
「いえ、そのとき私にできることをしたまでです。その時の礼と言ってはなんですが、今宵一晩、ここに泊めてはもらえぬでしょうか」
「連絡は受けています。もちろんです、一晩と言わず何日かお泊りになっても…」
「急ぎの用があり、明日の朝には出立したいと思っているのです」
レイアは残念そうに、そうでしたか、と頷いた。
「それよりも、あなた方のほうはいかがですか。あれから少したっていますが…レイア殿も隷属紋を打たれていたのに、今では砦の守護を務めておられるとは、無理をなさっていませんか?それに姉君ご夫婦とお子さんたちは里に帰られたということですが、姪御さんや甥御さんの心の傷は大丈夫ですか?」
心配そうなカルロスに、レイアは瞳を細め微笑んだ。
「はい、私は大丈夫です。姉たちよりずっと弱い隷属紋でしたし、影響は少なかったのです。聖銀様に癒していただきましたし…本当に、感謝しています。姪のエナと甥のシャルも順調に回復しているとのことです。お気遣いいただき、ありがとうございます」
「そうでしたか」
カルロスは心底ほっとしたように、深い深い息を吐いた。
本当に、心配していたのだ。水竜の砦での争いのあと、魔法師たちと一緒に地竜トリスラディのもとで過ごし、ドラゴン会議のために黒鋼竜の領地にやってきて、今回マ・リエたちと合流したカルロスは、水竜たちがどうしているかずっと気になっていた。
自分が助け出したレイアも元気そうで、心から安堵した。
実は彼女のことが一番気になっていたといっていいカルロスは、にこにこと微笑んでいるレイアの嬉しそうな表情を見て、胸の中がほんわりとあたたまるのを感じていた。
この気持ちはなんだろう。
じっとレイアを見つめていると、視線に気づいた彼女がカルロスを見た。
目が合うとレイアはぱちぱち、とせわしなくまばたきをして、まぶしそうに瞳を細めた。
「レイア」
我知らず、声が漏れてしまった。
レイアは、えっと小さな声を上げて頬を染め、手で口を覆う。
カルロスはあわてて言った。
「す、すみません…呼び捨てにするつもりは…」
「い、いえ、大丈夫です…カルロス様になら…」
二人して赤くなっているのを見た他の面々は、互いに顔を見合わせて微笑んだ。
カルロスとレイアはあわててお互いに向かって頭を下げる。
「そ、それにしても良かった。皆さん順調に回復しているようで…」
「はい。皆さまのおかげです」
ひどいめにあっていたとマ・リエから聞いた子どもたちも、回復に向かっているという。
「さあ皆さん、いつまでも立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
レイアが砦の中へと客人を誘おうとすると、黒鋼竜たちは首を横に振った。(続く)
第159話までお読みいただき、ありがとうございます。
カルロスとレイアはいい感じですね。レイアの招きを、黒鋼竜たちは何故断ったのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




