第156話。鞠絵とナギを魂の孤独から救ってくれた幼い聖銀竜の子マ・コト。ぴやぴや鳴く幼い竜の子を、やわらかいタオルにくるんで抱きしめてやり、産湯を使おうとする鞠絵だが…。
第156話です。
マ・コトを見て初めて、私はナギだけでなく自分もどれだけ孤独であったか思い知った。心の中で凍り付いた部分が溶けてきて、それがあたたかい涙になって瞳から流れ落ちてきた。
私は孤独から救われた。
ありがとう、マ・コト。
あなたが私たちを、救ってくれたのよ。
私はあなたの魂を救ったかもしれないけれど、あなたも同じように私たちを救ってくれた。
産まれてきてくれて、ありがとう。
ぴやぴや鳴いているマ・コトはとても小さくてウロコもまだ柔らかくて、翼はまだ縮んでいて、全身が濡れていた。
そのウロコの色は、ナユにそっくりな白銀色をしていた。
ナギがそれを見て、本当に嬉しそうに体を揺らした。
マ・コトは懸命に私に幼い両手を伸ばしてきたので、おばば様のほうを見ると、彼女は笑顔で頷いて言った。
「もう大丈夫ですから、抱いておやりなされ」
「は…はい」
そうは言ってもようやくタマゴから出てきたばかりの竜なのだ。出来たての体に手をかけることは怖かったけれど、あまりにマ・コトが両腕を私に伸ばしてぴやぴや鳴くものだから、タマゴの中にそっと両腕を差し入れて、脇の下を支えて持ち上げた。
持ち上げるまでに何度か持ち直したのは、やっぱり怖かったから。
抱き上げるとその体はあたたかくて柔らかく、びっしょりと濡れていた。私の背後から、真竜の女性の一人がタオルを差し出してくれる。
「どうぞ、産湯をお持ちするまでお使いください」
「は、はい」
柔らかい真っ白なタオルにくるんで胸に抱くと、マ・コトは嬉しそうにぴや、と鳴いた。
私は胸の中のやわく幼い竜を、そっと両腕で抱き締める。
約束を果たすために。
「マ・コト。産まれてきてくれて、ありがとう。いい子ね、愛してるわ」
「ぴやー!」
マ・コトはきゃっきゃと私の腕の中で喜んで、小さな腕で私を抱き返そうとしてくれた。
こんなに幼いのに。
愛を返すということを知っているなんて、竜とはすごい生き物なのね。
これからも、あなたをこうやって抱き締めて愛を伝えるわ。
私に出来る限り、精一杯。
「聖銀様、産湯でございます」
真竜の女性たちが大きなタライに入ったお湯を持ってきてくれて、私は面食らった。
だって、当然まだ赤ちゃんを産湯に入れるなんてこと、したことなかったのだもの。
「私たちがいたしましょうか?それとも、聖銀様がなさいますか?」
そう問われて私は迷ったけれど、自分で世話をしたくて私が、と頷いた。
だって、家族ですもの。
そうは言っても迷う私に、おばば様が教えてくれた。
「聖銀様、こうするのですよ」
おばば様の導きに従って、私はおっかなびっくりマ・コトをお湯につけて洗い流してやり、さっきとは別の乾いたタオルで拭き取ってあげた。
すごく緊張した…。(続く)
第156話までお読みいただき、ありがとうございます。
マ・コトが産まれてきてくれて、鞠絵もナギもとても嬉しかったですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




