表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/355

第153話。タニアから、聖銀竜マ・コトのタマゴにヒビが入ったと聞かされた鞠絵は、あわててマ・コトのもとへと向かおうとするが…。

第153話です。

 タニアが持ってきたばかりの水は、冷たくて美味しかった。何杯も一息に飲み干した私は、ようやく人心地がついてため息をつく。

「大丈夫ですか?姫様?」

 私の背中をあたたかい手で撫でてくれるタニアに、私は頷いてみせた。

「もう大丈夫。心配かけちゃったわね…ごめんなさい。ところで、外が騒がしいみたいだけど…どうしたの?」

 するとタニアは私から水のコップを受け取りながら、驚くべきことを話してくれたのだ。

「先ほど、聖銀竜のタマゴにヒビが入ったと、領地内が大騒ぎなのです」

「えっ!」

 うそ、こんな早くに!?

 それを願って歌ったけれど、それにしても早すぎない!?

 それに、気になるのは。

「ど、どのタマゴにヒビが?」

「マ・コト様のタマゴだと、伺っています」

 マ・コト。

 あんなに片割れに戻るのを怖がっていたのに、最後には聖銀竜としての責任を果たすべく還っていった、幼い子。

 二人が一人となって、力を得て最も早く孵ろうとしているのだろうか。

「わっ私、行かなくちゃ」

 彼らがこの世に生まれ出てくるときには、抱き締めてあげなくちゃ。

「それではお着替えをしなければですね。お目覚めになられたこと、おばば様にお知らせしてまいりますから、まだベッドでお待ちになっていてください」

 そう言われて、私ははやる心を抑えて頷いた。

「わかったわ。でもマ・コトは…」

「大丈夫です。そうすぐには、タマゴは孵りませんから…間に合いますよ、ご安心ください」

「そ、そうなのね」

 しかしその時、タニアが出ていくまでもなく、ドアがノックされておばば様が顔を出した。

「聖銀様!お目覚めになられましたか!」

「ええ、ついさっきですが。おばば様、マ・コトのタマゴにヒビが入ったそうですね」

「そうなのです!虎娘よ、お目覚めになられたらすぐに私に知らせるようにと、言っておいたではないか」

 その呼称に、タニアは唇をとがらせた。

「虎娘はやめてください!今、向かおうと思っていたところですよ」

「おばば様、着替えたら私もすぐに向かいます!」

「ではここで待っておりまする」

「そんな、ではそこの椅子に座っていてください」

 二日以上も眠っていた体は、疲れはとれていたがフラフラしていて、ちっとも言うことを聞いてくれなかった。タニアに手伝ってもらわなければ、一人ではとても着替えられなかったに違いない。

 ようやく動きやすい服に着替えて、タニアに支えてもらいながらおばば様と共に洞窟に向かった。

 あまりにゆっくりしか歩けないものだからお願いしてみたら、タニアは私を軽々とおぶってくれた。私は長いスカートをはいていたけれど、裾が広がるタイプのものだったので、おんぶをしてもらっても問題なかったが、おばば様の言葉が飛ぶ。

「虎娘、聖銀様を落とすでないぞ!たとえそなたが倒れて鼻先をすりむこうとも、聖銀様を落とすことまかりならん!」

「もう、そんなことわかってますよ!私の名前はタニアです、虎娘って言わないでくださいってば!」

 そんな言い合いをしながら、おばば様の開錠の言葉でいくつもの光る鍵穴の扉をぬけていく。

 最後の扉の前で、竜以外の立ち入りを禁じられているため、タニアは私を背中から下ろした。(続く)

第153話までお読みいただき、ありがとうございます。

マ・コトのタマゴがとうとう孵るのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ