第152話。風竜の長ミンティ・ラナクリフに、鞠絵はちゃんと御礼が言えたのか?あまりの疲労に寝込んだ鞠絵を世話するタニア。
第152話です。
やがて、そっと肩が押されてラナクリフ様から離されると、私は目を開けて翡翠色の瞳を見上げた。
「もう行かなくちゃ。聖銀ちゃん、今回はすごいものを見せてもらった。また私の力が必要になるときには、遠慮なく言って。私はあなたのことが大好きだから、喜んで手を貸すよ」
「ありがとう、ミンティちゃん。私もあなたのことが大好きよ。今回は本当にありがとう。おかげで助かりました。また、よろしくお願いします」
ようやく、言いたかった御礼が言えた。深く頭を下げた私の背中を、ラナクリフ様が優しく撫でてくれた。
「うん、またね。よく休むんだよ。綺麗で優しくて可愛い、大好きな聖銀ちゃん」
それじゃね、という言葉を残して、ラナクリフ様は再び四枚の羽根を広げ、たちまち上空へと消えていった。
ほんとにすごい、これが風竜の長の本来のスピードなのね。
上空をただ見上げた私は、もう一度心の中で御礼を言って、踵を返した。
部屋に戻らなくちゃ。
昇った朝日がまぶしい。部屋に帰って、もう少しだけ、眠ってもいいだろうか。
なんだかどっと疲れが出てきた気がするの。
ナギの気配を探ってみたけれど、彼は完全に睡眠に入ってしまっていた。
無理もないわね、あれだけの力を使ったのだもの。
くたびれ果てて、私の中で眠りについているのね。
そういう私も、玄関で待っていてくれたタニアに駆け寄る体力もなくて、彼女に手を振りながらゆっくり歩いていった。何かを感じ取ったのだろうタニアが走ってきてくれて、私を支えて部屋まで連れて行ってくれた。
上着と靴を脱いで、泥に絡みつかれたかのように重い体をベッドに横たえて…そこから先は、覚えていない。
…なんだか、周囲が騒がしい。
ようやく戻ってきた意識の中で、ぼうやりとその喧噪を知覚する。
バタン、と音がして、ちょうどタニアがタオルや水差しを持って部屋に入ってきたので、私は声をかけた。
「タニ…ア」
やだ、声がかすれちゃってる。
するとテーブルに水差しを置いていたタニアは、凄まじい勢いで振り向き、ベッドに駆け寄ってきた。
「姫様!目覚められましたか!」
何やら真剣な声で叫んだタニアが私を覗き込んできて、あからさまにほっとした顔をしたので、私は不思議な気持ちになって彼女をぼんやりと見上げた。
「どうした…の?タニア」
「姫様は、あれからまる二日以上も眠り続けていたのですよ。水竜の砦でも眠られていたけれど、あのときはサラもいましたし…いまは私ひとりで…姫様がこのまま目覚められないんじゃないかって不安で…とても心配しました」
そうだったのね。自分ではそんな自覚はないのだけれど…声はかすれてるけれど、重かった体はすっかり楽になっている。
私の中のナギを探ってみたけれど、彼は私の中でまるくなって、まだ眠っているみたいだった。
そのとき、私はタニアが持ってきた水差しを思い出した。
「お…おみず…」
そう呟きながらベッドの上に上体を起こそうとすると、タニアが背中に手をやって、起きるのを手伝ってくれた。
「ありが…とう」
「今、お水を持ってまいりますね」(続く)
第152話までお読みいただき、ありがとうございます。
ミンティにちゃんと御礼が言えて良かったですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




