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第151話。舞い降りてきた風竜の長ミンティ・ラナクリフに、お願いごとをしてみる鞠絵。彼女は叶えてくれるだろうか?

第151話です。

   ◆ ◆ ◆


 バサバサ、と羽ばたきの音が上空で聞こえた、と思った次の瞬間、翡翠色の風の竜が地上から少し浮いたところに見えた。

 すごい、さっきまで影も形もなかったのに、音がしたと思ったらもうそこにいるなんて。

 なんというスピードなのだろう。もし私がラナクリフ様に乗っていたら、きっと目を回してしまったに違いない。それとも、あっという間に振り落とされてしまったかも。

 風竜ほどではなくとも、黒鋼竜は神竜なのだから、本来はもっとスピードもあったはずだと思うと、私を乗せてくれていたハリル様も、ハリル様を囲んだほかの皆さんも、どれだけ私に気を遣ってくれていたのかよくわかった。

「ただいま、聖銀ちゃん」

「お帰りなさい、ミンティちゃん。飛んでるあなたもとても綺麗よ」

 するとラナクリフ様は翡翠色の瞳を細め、口の端を上げたので、笑ったのだとわかった。

「ありがとう、聖銀ちゃん。ほめてもらって、とても嬉しい」

 宝石色の大きな竜を目の前にして、何もかもその翡翠の色に染まった私の脳は、しなければならないことも忘れて、たまらず願望を口にしていた。

「ね、ミンティちゃん。お願いがあるのだけれど」

「なあに?聖銀ちゃんのお願いなら、なんでも聞くよ?」

 えっ、本当に?それなら…どうしてもしてみたいの。こんな機会、めったにあるものじゃないし。

「あのね。触っても…いいかしら」

「えっ?」

「できれば、ハグもしてみたいのだけれど」

「………」

「だ、ダメ…かな?」

 ウロコはとても繊細だから、下手に触ったらいけないとか?

 けれどラナクリフ様が私を見つめる瞳は潤んでいて、優しく微笑んだまま彼女は頷いてくれた。

「聖銀ちゃんは私を綺麗だって言ってくれた。その上触りたいって思ってくれるなんて、とっても嬉しいよ。おいで、ハグしよう」

「わっ、ほんとですか!?」

「もちろん。でもこのウロコは風を切るのに特化しているから、聖銀ちゃんが傷つくといけない。だからそっとね」

 やっぱり翡翠色をしているその両手を広げてくれたので、私は心はやるまま飛び込みたいのをぐっと我慢して、そうっとその胸におさまった。

 涼やかな見た目からひんやりしているのかと思いきや、ウロコからラナクリフ様の体温が伝わってくる。

 間近で見ると一枚一枚が大きくて、本当に翡翠なんじゃないかと思えるほど、その色は濃淡があって筋も入っていて、まさに宝石のようだった。

 そっと頬を押し当ててみれば、すべすべのウロコからラナクリフ様の鼓動が聞こえてくるような気がした。

 翡翠で覆われた、生きた宝石。

 なんて素晴らしい、生き物なのだろう。

 これが、風の竜の長。

 今まで見たことのある真竜やその長は何人かいるし、それぞれに立派で、特に長クラスはそのオーラも相まって見事な御姿をしていたけれど、美しさではラナクリフ様が一番だ。

 私は心の中でそう頷いて、ラナクリフ様が爪で私を傷つけないように優しく抱いてくれるのに目を閉じた。(続くかのじ)

第151話までお読みいただき、ありがとうございます。

ミンティちゃんがハグしてくれて良かったですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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