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第150話。大変美しい風竜の姿をした長ミンティ・ラナクリフだったが、その過去にあったものは…。

第150話です。

 その祖母が亡くなったとき、墓の傍らに呆然と立ち尽くすミンティに、同じ年ごろの子どもたちが風魔法を発動し、結ってある二つの髪のうち一つを、祖母のリボンごと切り飛ばした。

『出ていけ、バケモノ!』

 そんな言葉とともに祖母のリボンの一本をズタズタにされたミンティは、表情の消えた顔で子どもたちを振り返った。そして発動させた風魔法で彼らの顔の周辺の空気を、肺の中の空気とともに吸い出して、彼らの呼吸を奪ってしまった。

 それほどに、ミンティの魔力は強く、その制御は誰にもできないほど精密だったのだ。

 ちょうど近くまでやってきていた風竜の長が急いで、そんなことをしたら祖母が泣くぞとミンティを止めてくれなかったら、彼女は子どもたちを殺してしまったかもしれない。

 ようやくほろりと涙をこぼしたミンティは、長にすがっておばあちゃんのリボンが…と涙をぼろぼろ零しながら、切られたリボンを抱き締めて、引き攣るように泣いた。

 姿を重んじる種族ではあったが、それを見た長はこの子もただの風竜の子どもなのだと思いなおし、それからは族長が育ててくれた。

 彼女のとてつもない力を、正しい方向に使うように教育しながら。

 ミンティはそれ以後、髪を伸ばすことはなかった。誰も結ってはくれなくなったし、短ければまだらは目立たないからだ。

 そして彼女自身、コンプレックスである竜の姿は極力人目につかないように気を配ってきた。

 だからこそ、美しいもの、可愛いものがとても好きだった。

 それを。

 里でバケモノとののしられた姿を、新たな風竜の長となってからも祖母以外誰もほめてはくれなかった姿を。

 あの聖銀竜との混じりものの娘は、あんなに全力でほめてくれたのだ。

 別の世界から来たというから、もしかしたら価値観がこちらの世界とは違うのかもしれない。けれどそれでも、ミンティは嬉しかった。

 姿が美しくて気に入った娘が、自分のコンプレックスを払拭してくれたのだから。

「おばあちゃん…聞いてた?私、すごく綺麗なんだって…」

 大粒の涙が、その両方の大きな瞳からほろほろと零れ落ちる。

 透明な涙は翡翠色の頬を濡らすと同じ色に輝き、やがて空中に落ちて、キラキラと輝きながら霧散していった。

 しばらくの間、雲の上で朝日を浴びた翡翠色の竜は、その四枚の羽根をゆったりと羽ばたかせてただ、泣いていた。(続く)

第150話までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は短いお話でしたがすみません。きりがよかったので…。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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