第149話。鞠絵から見ると素晴らしく美しい竜の姿のミンティだったが、ほめられて涙を流す彼女の生い立ちは、実は…。
第149話です。
「あっ、もう帰ってしまうの?」
正直、マ・リエはもう少し見ていたかったのだ。
昇ってきたばかりの朝日に照らされた、芸術品の竜を。
すると上を向いたミンティは首を横に振り…それだけでも、朝日を反射してウロコが輝いた…早口で言った。
「ちょっと、飛んでくるだけ。すぐ戻るから」
「え、う、うん」
四枚の羽根が広げられ、大きく羽ばたいたと思った次の瞬間、ミンティの姿はマ・リエの前から消えていた。
さすがは風竜の長、そのスピードは他の神竜たちを凌駕する。
あわてて頭上を見上げてみたけれど、どこにもその姿はなかった。
ミンティは黒鋼竜の領地から飛び上がり、雲の上まで出ていた。
昇ったばかりの朝日が涙でぼやけて見える。
「おばあちゃん」
彼女は小さく呟いた。
「おばあちゃん。私、ほめられちゃった。綺麗だって、言われたよ」
混ざりものの竜は、竜の姿になってタマゴを産み、竜の姿でタマゴから産まれてくる。
彼女の母は、タマゴから産まれ出たミンティの姿を見てすぐに悲鳴を上げて気絶し、父は刃物を振り上げて四枚の羽根のうち二枚を切り落とそうとして、その母である祖母に止められた。
風竜は姿を重んじる種族であったためもあり、あまりの魔力の発現か、全身が濃淡まだらな翠色であり、何より四枚の羽根をもつバケモノだとして嫌悪された。
竜の羽根は二枚であるべきなのだ、人間の腕が二本であるように。
それに、全身がまだらな竜もほかにはいなかったのだ。
両親は彼女を拒絶し、その愛情を受けられなかったミンティを愛し育ててくれたのは、父を止めてくれた父方の祖母だった。
竜としての体を美しいとほめて、四枚の羽根も羽ばたくための羽根が多いのはいいことだと喜んでくれた。
それでも祖母とミンティは、里の外れに隠れるように住み、人目を避けて交流もほとんどしなかった。
子どもたちはミンティを見ると、人の姿をしていてもはやしたて、石や泥を投げつけののしってきた。大人たちはミンティを避けて遠巻きにし、ひそひそと悪口を言って恐れたり、または笑ったりした。
当時の風竜の長はそれらを全て知ってはいたが、彼自身もミンティを恐れるあまり、何もしてくれることはなかった。
だからミンティにとって、祖母は全世界にも等しく、この世でただ一人の味方だった。
そんなある日、祖母がミンティのまだらの髪を二つに結い、それぞれに手作りのリボンを結んでくれた。
『とっても可愛いわよ、ミンティ』
そう言われ、ミンティはとても喜んだ。その言葉とリボンは、ミンティの宝物となった。彼女は髪もまだらなのを気にしていたが、祖母がきれいだとほめたため少し伸ばしていたのだ。(続く)
第149話までお読みいただき、ありがとうございます。
ミンティちゃんはおばあさん以外にはうとまれて育ったのですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




