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第147話。風竜の長ミンティ・ラナクリフに御礼を言うべく向かう鞠絵。そこにいたのは朝日に輝くそれは美しい一頭の竜だったが、しかし…。

第147話です。

 夜明け寸前の外は、厚い上着を羽織っていても寝間着では少し寒く、うっすらと明るくなってきているが誰一人いない。

 出立したのが夜中だったことを考えれば、一晩かかったのだ。

 ラナクリフ様もお疲れに違いないのに、こんな時間に帰られるなんて、よほど竜の姿を見られたくないのだろう。

 私が見てしまって…いいんだろうか。

 でもどうしても、最後にお会いしたい。

 おばば様の館の玄関を出てしばらく走り、きょろきょろとあたりを見回すと、木々の向こうにちらりと緑色の大きなものが見えた。

 あっ、きっとあそこだわ。

 急いで、鞠絵。もう日が昇る。

 私は急いでそこまで走り、木々の合間から覗き込んで…そして、驚きで固まった。

 そこにいたのは、一頭の竜。

 風竜は七竜の属性竜の中で最も華奢で小柄だと聞いていたけれど、それでも十分に巨大な竜。

 風竜の長、ミンティ・ラナクリフ様の竜の姿だった。


   ◆ ◆ ◆


 ちょうど昇ってきた朝日が、(みどり)色のウロコに反射する。

 それは国宝級の職人が、一枚一枚高級な翡翠(ヒスイ)を丁寧に磨きあげて、絶妙な位置に配置したかのような輝きだった。

 翡翠はびっしりとミンティの全身を覆っていて、そのあまりの艶やかな輝きにマ・リエは言葉を失う。

 ちょうど昇ってきた朝日を受けて、翠色の竜は自らが発光するように、周囲にその輝きを振りまいている。

 一枚一枚のウロコはただの翠色ではなく、微妙に異なる濃度の色が重なり合っていて、朝日に照らされる様は稀有なる翡翠の竜そのものだった。

 その翼は、この世界で初めて見る四枚羽だった。背中から伸びる太い骨から、コウモリの羽のように薄い膜が、細い骨から骨へと張られている。まるで翠色のシャボン玉を吹き付けたかのように、膜は朝日に様々な濃度の翠色をきらめかせ、翠の油膜を張ったかのようだった。

 やはり四本ある角も、それぞれ一つの翡翠を掘り出して作られた芸術品のようだ。

 長い尻尾もびっしりと翡翠のウロコで覆われ、動くたびに朝日に翠色の虹を描いていた。

 その中でも特に目を引くのは、ウロコの中で輝く瞳。

 神の職人が心をこめて特に見事な一つの翡翠を磨き上げ、神の水をその上に膜として張ったかのような、潤いのある翠色の瞳。

 その中央にある竜らしい縦長の瞳孔は、最も濃い翡翠で削り出されてはめ込まれているかのようだった。

 その瞳が、木々の間で呆然と立ちすくんでいるマ・リエに向く。

「せ…聖銀ちゃん!」

 しかし、神々しく輝く風の竜の長は、あわてたように叫んで後ずさりした。

「ま…待って、見ないで、こんな醜い姿を見ないで…!」

 醜い?

 意外な言葉に、マ・リエは我を取り戻してミンティに駆け寄ろうとし、彼女によって止められた。

「来ないで…!」

「ミンティちゃん?どうして?どうして嫌がるの?そんなに綺麗なのに」

 すると翡翠色の風竜は、よじって逃れようとしていた体を止めてマ・リエを振り返った。(続く)

第147話までお読みいただき、ありがとうございます。

ミンティちゃんはなぜそんなにいやがるのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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